その薬まだ使える?捨てるべき?〜薬剤師がお話する「薬の保管方法と使用期限」〜

家に持ち帰った薬、普段どのように保管されていますか?食品と同じように、冷蔵庫に入れておけば長持ちすると思っている方もいらっしゃるかもしれません。薬には保管に適した条件があります。薬の保管方法を間違えると十分な効果が得られないことがあります。今回は薬の保管方法と使用期限についてお話したいと思います。

薬は温度・湿度・光に影響されます~適切な保管方法を一緒に整理しましょう~

薬の保管場所は暗くて涼しい場所が適しています。
薬は温度・湿度・光等の影響で有効成分が分解されてしまう事があります。そのため、製薬メーカーが一定の条件で有効成分が分解されるかおよび製剤が安定かどうかの試験を行い(表1)、その結果で保管方法が決められています。

表1 医薬品の安定性試験 厚生労働省・医薬品の安定性試験の実施方法より作表

※1 RH:相対湿度  ※2 lx:ルクス(照度の単位)

①温度
通常は湿気、日光、高温を避けて、室温で保管します(表2)。多くの錠剤、カプセル剤などがこれに該当します。夏場の暑い日は室内温度が30℃を超えることがあり冷蔵庫の方が良いのではと思う方がおられるかもしれません。しかし安心してください、室温保存の薬は表1にある加速試験に合格していますので、室温で問題ありません。逆に室温保存の薬を冷蔵庫で保管してしまうと薬によっては湿気を吸ってしまうことがありますので注意が必要です。もっと詳しい内容を知りたい方は薬剤師にご相談下さい。

表2 温度の定義 日本薬局方通則より作表

一般的にはシロップ剤、一部の坐薬、一部の目薬、未開封のインスリン注射等は冷蔵庫で保管します。薬袋や薬剤情報提供書に「冷所保存」と書かれていたり、薬を受け取る際に冷蔵庫に入れて下さいと説明されたことはないですか?薬を冷蔵庫内で保管する時はドアポケット等の冷風が直接当たらない場所に入れてください。冷風が直接当たると、薬が凍ってしまうことがあり、薬の成分が変化してしまう場合があります。また、袋などに入れて保管することで一定の温度を保つことが出来ます。開封後のインスリン注射は、温度差による結露などを避けるため、室温保存となりますのでご注意ください。

②湿度
錠剤の中には湿気に弱く崩れやすいものがあります。口腔内崩壊錠(OD錠)など口の中ですぐに溶けてしまう錠剤がそれに当たります。薬を取り出す際は注意してください。特に湿気と光に弱い薬は両面アルミシートに覆われていることが多いです。通常、薬はPTPシートで包装されていますが、医師の指示によりシートから出され他の薬と一緒に1回分ずつ分包される(一包化)ことがあります。この場合はPTPシートに入った薬よりも湿度の影響を受けやすくなるため、さらに注意が必要です。また、粉や顆粒は湿気の影響を受けやすく、梅雨時などは変色したりカビが生えたりすることがあります。これらの湿気対策として缶に乾燥剤を入れて保管することをお勧めします。

③光
薬は直射日光を受けると変質しやすくなります。そのため、薬の保管方法に「遮光保存」と注意書きのあるものがあります。光があたると薬が分解される恐れがあるため、光が当たらない場所に保管する必要があります。薬によっては遮光袋をお渡ししますので、必ず袋に入れて保管するようにして下さい。

【使用期限】

薬には使用期限があります~家にある薬を整理しましょう~

薬には効果や安全性を保証するため使用期限があります。未開封の状態かつ適切な環境下で保管した場合、製造してから3年程度は、効き目が変わらずに使用出来るとされています。これは医薬品の長期保存試験に基づいています(表1参照)。
処方薬(医療機関で処方せんに基づいて薬剤師から渡された薬)のおおよその使用期限を表にしました(表3)。あくまでも「目安」であり、保管環境により短くなる場合がありますのでご注意下さい。

表3 処方薬の使用期限の目安

飲み残した薬、頓服薬など、特に引出しの奥から出てきた古い薬などは期限に注意してください。
一度開封された薬は、温度や湿度、光の影響を少なからず受け変質してしまうことがありますので、開封後は早めに使いましょう。

使用期限を調べる方法~薬の包装シートから判断する~

今までの話であなたの持っている薬の使用期限が気になってきましたか?実は処方薬は以下の方法で期限がわかる場合があります。
・薬のシートの裏にある製造番号、ロット番号、バーコード
・薬を納品した際の納品伝票や請求書
・薬を入庫する際の管理システムのデータ
調剤してもらった薬局に問い合わせすれば、薬の期限を検索してもらうことが可能です。ただし、調べて確認することができる使用期限は未開封の状態で適切な環境下で保管したことを前提としていますのでご注意下さい。

まとめ

今回は薬の保管方法と使用期限についてお話しました。
家に余った薬はありませんか?
体の調子が良くて飲まなかった薬や、飲み忘れにより余った薬のことを残薬と言います。現在飲んでいる薬ならば、医師や薬剤師に相談すると、次回に処方日数を調整(残薬調整)することが可能です。残薬は薬の適正使用や医療費の観点から社会問題の一つとなっており、厚生労働省の資料によると残薬の金額は年間500億円にもなると言われています。ご自宅に残薬があると、飲み間違いの原因となってしまいます。自宅にある薬は年に1回は整理するようにしましょう。いつの薬かわからないものは思い切って処分することも大切です。

参考文献
厚生労働省ホームページ
日本薬剤師会ホームページ