気管支喘息とCOPD(慢性閉塞性肺疾患) 呼吸器内科 増田 憲治
長引く咳や息切れはとてもつらい症状です。長引く咳や息切れが生じる原因として多くの病気がありますが、その中に、「気管支喘息」と「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」という病気があります。「COPD」は以前には「肺気腫・慢性気管支炎」と呼ばれていました。
「気管支喘息」は、花粉やハウスダスト(家のホコリ)、動物の毛などによるアレルギーが原因で生じる気管支の炎症性の病気です。一方で、「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」はいわゆる「タバコ肺」と呼ばれているもので、主に過去・現在の喫煙によって生じた気管支の炎症や肺胞の破壊により呼吸機能が次第に低下する病気です。
この2つの病気は症状が似ているため区別が難しいことがありますが、その原因や生じている状態が違うため治療法が違います。さらにややこしいことに、これらが合併していてどちらかの治療だけでは症状が改善しない「喘息とCOPDのオーバーラップ[重複](ACO)」という病態があると最近言われるようになりました。
気管支喘息やCOPDの診断には、問診(喫煙歴、症状の現れ方や強く出る時刻、環境による症状の変化など)、肺機能検査、胸部レントゲンやCTなどの画像検査、気管支喘息
に特徴的な気管支のアレルギーによる炎症を見つけるために有用な検査である呼気一酸化窒素(呼気NO)測定検査などで診断します。
いずれも早期の診断と治療が大切ですので、咳や息切れが続く際には早めにご相談ください。
気管支喘息の診断を補助する呼気NO 臨床検査技師
呼吸器内科の増田先生着任をきっかけに導入された、気管支喘息の診断を補助する呼気NO(一酸化窒素)濃度測定検査をご紹介します。喘息の慢性炎症により特異的に気道上皮でNOを作る酸素が増え大量のNOが生産されます。測定方法は簡便で一定の力で息を吐き続けるだけです。但し、喫煙やカフェインも濃度を低くする原因になるので注意が必要です。COPD(慢性閉塞性肺疾患)患者は呼気NOが高値にならない為、喘息の診断やステロイド薬の反応性の予測に有用です。
吸入薬の正しい操作方法を覚えましょう! 薬剤師
気管支喘息もCOPDも、昔は内服薬での治療が主流でした。しかし最近は、医学の進歩のおかげで良い吸入薬が開発され、内服薬の代わりに吸入薬を使用するようになりました。吸入薬は内服薬と違い、肺や気管支に直接作用するように作られているので、全身性の副作用が少ないのが特徴です。ところが、せっかく良いお薬を使用しても正しい吸入操作を行わないと期待した効果が得られません。ですから、正しい吸入操作をマスターする事がとても大切です。
口をすぼめて、ゆっくりと息を吐きましょう。 理学療法士
COPDと気管支喘息は、ともに閉塞性換気障害をきたす疾患です。気道が閉塞し、特に呼気で気流が制限されるため、“息が吐きにくい”状態になります。「口すぼめ呼吸」を行うことで、気道の閉塞が改善されるため、息が吐きやすくなります。息がしっかりと吐けることで、次にしっかりと息が吸えるため、効率的な呼吸ができます。
〈方法〉
- 鼻から息を吸う
- ロウソクの火を消す時のように口をすぼめ、吸った時の2~3倍の時間をかけてゆっくりと息を吐く
自己管理が大切です! 病棟看護師
両疾患は、発症年齢や原因は異なりますが、糖尿病や高血圧と同様に慢性的な疾患で自己管理が肝心です。これから季節的に、空気が乾燥し、気温が下がってくるため、感冒症状をきっかけに発作を起こしやすい時期と言えます。インフルエンザなどのワクチン接種を行い、予防に努めましょう。気管支喘息患者さんは、日常生活の中で、自分がどのような時に発作を起こしやすいのかを把握し、喘息を悪化させない環境をつくることが大切です。過労やストレスは、発作の誘因となるので十分な休息と睡眠をとるようにしましょう。COPDの患者さんも、呼吸困難を助長させる寒冷刺激や動作、便秘は避けるようにしましょう。呼吸困難のために、食欲が低下しがちで、さらに筋力低下をもたらします。食事量は少なくても、食事回数を増やして、脂質の多い高カロリーなものを取り入れるようにし、体力の維持に努めましょう。