最近の弁膜症センターの取り組み 心臓血管外科 岡田 行功 ~広報誌「みどりの風」vol.27~

最近の弁膜症センターの取り組み  広報誌「みどりの風」vol.27より

  弁膜症センターでは大動脈弁狭窄症に対する人工弁置換術、僧帽弁逆流に対する僧帽弁形成術は定期的に行われています。最近高齢者を中心に心房細動・高度三尖弁逆流による心不全が増加しています。心臓弁膜症では心房細動は僧帽弁疾患による左房拡大によって生じることが多いとされています。しかしながら最近の症例では僧帽弁逆流の程度は軽度から中等度であることが多く、胸部写真を撮ると心拡大が著明(図1)で、心電図は心房細動(図2)、心エコー図検査では高度な三尖弁逆流(図3)を呈します。

こうした症例では三尖弁逆流を制御する三尖弁形成術(図4)とメイズ手術(図5)を行うことで、心房細動が洞調律に復帰して、三尖弁逆流は消失して症状は確実に改善します。メイズ手術の効果は心房細動になってから数年以内で左房の心房細動の合併症は、心不全、血栓塞栓(殊に脳梗塞)であり、心不全に対する内科的治療では利尿剤投与、血栓塞栓予防に関しては抗凝固療法が行われています。また、心房細動に対するカテーテルアブレーションもよく行われています。しかしながら、三尖弁逆流が中等度~高度になると内科的治療では効果が期待できなくなるので、不整脈に対するメイズ手術と三尖弁形成術の対象となります。手術の危険率は極めて低いので心機能の低下しないうちに手術を勧めています。 手術後は心臓リズムが洞調律に回復し、心コー図検査で三尖弁逆流もなくなる(図6)ので脳梗塞のリスク、心不全のリスクも有意に少なくなります。重症の12例(平均年齢77歳)を手術して良い成績が得られています。内径が6㎝未満のうちが効果的であるとされています。