心臓CT検査を終えて~放射線技師しか知らない第2ラウンド・心臓3D画像の構築~

心臓CT検査を受けたことがある方はご存知と思いますが、心臓CT検査の結果を踏まえた診察は検査直後ではなく、後日改めて来院していただくことがほとんどとなっています。
また、どうしても検査当日に診察を受けたいという方も数時間お待ち頂いているのが現状です。
なぜ、診察までにこんなに時間がかかるのでしょうか?
今回は、心臓CT検査を終えたのち、どのようにして診察できる画像となるのか、どのようにして3D画像が作られて行くのかをご紹介したいと思います。

~無事、心臓CT検査が終わりました!!~

無事に心臓CT検査(撮影)が終わり、患者さんはもうCT撮影室にいらっしゃいません。
はい、実はここから私たち放射線技師の作業(闘い)が始まります!笑

心臓CT検査が終わると、私たちはすぐに撮影された画像のチェックに入ります!
・撮影したい範囲がきちんと撮影されているか。
・撮影したい血管(冠動脈)がきちんと造影されているか。
・患者さんによる息止めがきちんと行われているか。。。などなどです。
心臓CT検査のように造影剤を使った撮影では、撮影したい部分に造影剤が来たタイミングを狙って撮影を行うため一発勝負なのです!
そのため撮り直しは難しく、ドキドキしながら撮影後の画像とご対面します。。。笑

心臓CT検査では、心臓の拍動に合わせて撮影を行っています。
心臓の拍動に大きな変動のない方などはCT装置が自動的に心臓の拍動のいいタイミングに合わせて元画像を作成してくれるのですが、不整脈など拍動に大きな変動がある方は私たちがいいタイミングの部分を探すこととなります。。。
見つかればいいのですが、見つからないこともしばしば。。。泣
息止めが出来ていなかった場合は、正直なところ私たちの力ではどうにもならないのが事実です;

~さあ、3D処理をしよう!:①血管名を当てはめよう!~

元画像が決まりました!!
いよいよここから3D処理に取り掛かります!
取り掛かるといっても、ある程度は機械が自動的に作ってくれているので、そこから完成形へと導いていきます。

まずは、それぞれの血管に正しい血管名を当てはめていく作業です。
心臓にある冠動脈という血管にはそれぞれ名前がついており、検査から時間が経過したり、診断をした医師以外の人が見てもどの血管のことを説明しているのかがひと目で分かるように血管一本一本に名前を当てはめていきます。
また、人によって血管の本数(細い血管の枝の数)や長さなども異なっているため、血管の本数が多い方は特にどの血管にどの血管名を当てはめるか、考えなければなりません。


図1:血管の本数が少ない冠動脈(左の写真)と血管の本数が多い冠動脈(右の写真)

~さあ、3D処理をしよう!:②消えた血管を抽出しよう!~

それぞれの血管に血管名を当てはめ終えたら、次はその血管1本1本を本来の長さまで写しだされているのかを確認し、機械では正しく抽出できなかった血管を手作業で1本1本抽出していきます。

図2:消えた血管を抽出していく工程

図2において、①の写真のピンク色の丸で囲われた血管が途中でプツンと切れてしまっていることが分かりますでしょうか?

この血管を、②の写真や他のいろんな角度から血管を回し見ながら、本来血流があるはずの長さまで血管を抽出していきます。
しかし、狭窄や虚血などにより血流がなくなってしまった血管は、造影剤という薬が流れないため映し出すことが出来ず、血管を抽出する作業も出来ないのです。

そして①の写真で、機械では正しく抽出できなかった血管を抽出し終えると、③の写真におけるピンク色の丸で囲ったところのような血管になります。


図3:息止めが出来なかった場合の画像

次に、図3において息止めが出来なかった場合、黄色の矢印が指す黄色の丸で囲った血管のようにプツンと切れて血管が映し出されます。
画像の結果として、ありのままを医師に伝えなければ検査をした意味がなく、また切れてずれてしまっている部分に狭窄はないのかどうか本来の姿は分からないことから、私たち放射線技師がこれ以上できることはないのです。

~さあ、3D処理をしよう!:③診断に影響を与える部分を切り取ろう!~

この検査において、医師がみるのは冠動脈と呼ばれる動脈です。
そのため、静脈などの必要の無い部分や、血管の周りにモコモコとついたものを切り取り、医師の診察しやすい画像にしていきます。

図4:診断に影響を与える部分の除去作業

図4の①において、黄色の丸で囲ったところに左から右へと走る血管からモコモコとしたものが生えているのが分かりますでしょうか?
このモコモコは動脈ではなく、医師の診断に影響を与えるモノなので除去しなければなりません。
このような診断に影響を与えるモノを②の画像のように、ひとつひとつ手作業で除去していくのですが、3D画像なのでいろいろな角度から回し見て③のような画像へと整えていきます。

~さあ、3D処理をしよう!:④心臓の形を整えよう!~

余分なものを取り除き、冠動脈と心筋(+軟部組織)だけとなりました。
今の状態では心筋の周りに映る軟部組織がボコボコしているので、形を整える作業に入ります。このとき、心筋を切らないように気を付けなければなりません。
この作業は医師の診断には直接的に影響のないもので、見栄えを整える作業となります。

図5:形成前後の画像

~3D処理をしよう!:⑤血管を1本ずつ保存していこう!~

最後に血管を1本ずつ、種類ごとに保存していく作業となります。
石灰化やステント留置など、血管の状況に合わせた条件で保存を行っていきます。

図6:それぞれの条件に適した画像

図6において、青色の丸で囲ったところにあるのが石灰化、赤色の丸で囲ったところにあるのが留置されたステントになります。
左①の画像では石灰化は見にくく、ステント内も真っ白なのでこれらを診断するにはとても適した画像とは言えませんよね。
中央の②の画像は石灰化に合わせた条件の画像となっておりますので、血管と石灰化の境界も明瞭で、どのくらいの大きさの石灰化があるのかが良く分かる画像となっています。
右の③の画像は、留置されているステントを見るのに適した条件の画像で、ステント内が狭窄なくちゃんと通っているのか。血液が通る道はあるのかが分かる画像となっています。

~最後に~

以上、このような長い工程を経てようやく心臓CT検査の3D処理は終了となります!
石灰化や狭窄などもなく、息止めもきちんと出来た方であれば1時間弱で処理は終了しますが、石灰化の多い方や特に息止めが出来なかった方は処理に何時間かかるかは元画像を見てみないと分からないということが少しは伝わったのではと思います。
私たち放射線技師がどのような仕事をしているのか少しでも伝わっていたら嬉しいです♪

心臓CT検査の内容・手順については、下記の記事をご覧下さい!
「心臓CT検査を受ける前に不安を取り除いておこう!」
URL:https://midori-hp.or.jp/radiology-blog/ccta_relieving_anxiety/

他にも、これまで更新して来ました心臓CT検査についての記事も掲載されておりますので是非ご覧下さい!
「心臓(冠動脈)CT検査で心臓の血管に狭窄があるといわれたら」
URL:https://midori-hp.or.jp/radiology-blog/coronary_stenosis/
「心臓の血管に石灰化があると言われたら」
URL:https://midori-hp.or.jp/radiology-blog/coronary_calcification/
「心臓(冠動脈)CT検査と心臓カテーテル検査」
URL:https://midori-hp.or.jp/radiology-blog/coronaryctvscoronary_angiography/
「放射線科より「もっと身近な心臓CT」」
URL:https://midori-hp.or.jp/radiology-blog/radiology-concept/