意外と知らない胸部レントゲンの撮影方法とその理由について

はじめまして。
今年の4月よりみどり病院に入職いたしました、診療放射線技師のHです。
まだ入職したてで分からないこともありますが、患者様のお役に立てるよう、日々の業務に全力で取り組んでおります。今回、胸のレントゲンについての記事を私が作成いたしましたので、皆様に読んでいただき少しでもみどり病院やレントゲンのことに興味を持っていただければ幸いです。

さて、多くの方が検診などで一度は胸のレントゲン撮影をしたことがあるかと思いますので、検査の方法や流れはなんとなくイメージできていると思います。なので、今回少し詳しく撮り方の違いや、よりよい写真を撮るためにいくつかお話しさせていただきたいと思います。

撮影手順の説明前に胸のレントゲンで使う機械の説明を簡単にさせていただきます。
以下の画像は胸のレントゲンの撮影風景です。

左の機械(緑の矢印)がパネルで、カメラのフィルムのような役割を果たします。
右の機械(赤の矢印)がX線管と言い、撮影に必要なX線を発生させる機械になります。
では撮影の手順は以下の通りです↓

①まずX線管側に背を向けて立ち、パネルに胸をつけます。
②腕全体をできるだけ前に突き出します。
③患者様とX線管まで2m程度の距離をとります。
息を吸った状態で呼吸を止めてもらい、撮影します。

Point① なぜ息を吸った状態でとめるの?

以下の画像をご覧ください。

〈吸気の胸部写真〉

〈呼気の胸部写真〉

1枚目の画像が息を吸った状態の肺で、2枚目の画像が息を吐いた状態の肺です。
息を吸った状態で撮影を行うことで横隔膜(赤い○で囲んだ部分) が下がり、肺が広く写ります。肺の隅々まで広く見られるようになると、病気の診断が行いやすくなります。

Point② なぜ腕を前にだすの?

以下の画像をご覧ください。

人間の肩甲骨(緑の○で囲んだ部分)は真正面からみると、上の画像のように肺に被って見えてしまいます。
そのまま撮影してしまうと、肩甲骨が肺と重なってしまい、肺の上の部分が見えにくくなり、診断に支障が出てしまいます。そこで、腕を前方に突き出すことで肩甲骨を肺の外に逃すことができ、肺上部も綺麗に見ることができます。

Point③ なぜ患者とX線管球を2mも離して撮影するの?

まずはじめに下の写真を見比べてみてください。
左の画像が1mの短距離で撮影した画像です。
右の画像は2mの長距離で撮影した時の写真です。

右の2mで撮影した画像に比べて、左の1m画像は心臓や縦隔(左右の肺に挟まれた空間)が拡大されて写っています。
この原因は画像の拡大が関係しています。
画像は、患者様とX線管が近いほど大きくなり、像が拡大します。
そして、患者様とパネルが離れれば離れるほど拡大します。

胸部のレントゲンでは、拡大をより小さくすることで診断に有効な実寸大と近い大きさの画像を得ることができます。そのため胸のレントゲンでは長距離で撮影を行い、患者様とパネルは出来るだけ密着させるのが綺麗な写真を撮るコツになります。

最後に・・・
胸のレントゲンは短時間で終わる簡単な検査ですが、見えるものは肺の中だけでなく、心臓の大きさで心不全など心臓の病気、X線の条件を変えることにより肋骨や胸骨といった骨の情報など様々な組織を診断することが可能です。
もし原因不明の痰や咳、息切れなど、日々の生活の中で異変を感じたらすぐに病院へ受診することをお勧めいたします。