胆石でお腹が痛い?次はどんな検査が有効?〜MRIで評価する胆石、胆道、膵管<MRCP検査のご説明>~

以前、当科記事にて胆石症についての記事を書いてますので、まずはそちらをご覧ください。

○胆嚢(たんのう)に石があると言われたら~胆石症について~
https://midori-hp.or.jp/radiology-blog/web19_5_05/

胆石がある場合、X線TV(透視)室にてERCPを行い、治療的に、
内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST:endoscopic sphincterotomy)や
内視鏡的乳頭バルーン拡張術(EPBD:endoscopic papillary balloon dilatation)
などが行われます。
これらは内視鏡(カメラ)を使用して行うため、多くの処置が必要になったり、侵襲性が高い検査(治療)になってきます。
そこで、今回は私たち『放射線科』でERCPの簡易版であるMRCP検査を行っているので、検査についてご紹介したいと思います。

〇CT VS MRI

胆石症や膵臓・胆道にがんがある場合は、CTで造影剤を使用しダイナミック撮影をして精密検査をします。
CTは検査時間も短く、細かい画像を作ることができますが、コントラストがMRIより劣ります。
MRIでは、検査時間は長いですが、CTの造影検査のような侵襲性はなく、膵管や胆管を描出することができます。
また、のう胞の描出にも優れており、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)や膵のう胞性腫瘍を見つけやすくなります。
当院では、CTの検査をした後、主治医の判断の下、MRCP検査(MRIによる胆道や膵管の評価)をすることが多いです。

〇検査前準備

患者さんにはMRCPの検査を受ける前に、2つの準備をしていただきます。(個人により有る場合と無い場合があります)
1) 造影剤の飲用
2) 鎮痙剤の注射(筋肉注射もしくは静脈注入)

1) 造影剤の飲用

MRCPの造影剤には、造影CT時のような『血管や腫瘍を見やすく染める』というものではなく、『邪魔な部分を見えなくする』という効果があります。
液体で水のようなお薬で、検査前に飲んでいただきます。

この造影剤を飲むのと、飲まないのとでは、以下の写真のとおりMRI撮影の写り具合が変わってきます。
黄色の線で囲っている部分が主に見たい部分ですが、摂取した水分や消化液など、邪魔になる信号が消えて見やすくなっています。

2) 鎮痙剤の注射(筋肉注射もしくは静脈注入)

MRI検査は動きに弱く、少し動くだけで画像が見えにくくなります。お腹の検査では腸のぜん動運動が影響してしまい画質が悪くなってしまいます。そこで、鎮痙剤を使用し、腸のぜん動運動を抑えて検査を受けていただきます。基本的に筋肉注射ですが、点滴がある方は点滴からお薬を入れる場合があります。

〇検査と画像について

前準備が終わったら検査開始です。検査時にはお腹に呼吸を計るセンサーをベルトと一緒に巻き、その上からコイルという撮影の機械を巻きます。お腹の検査では呼吸センサーがお腹の動きに合わせて画像を撮るため、検査中は深呼吸などせず、普段通り同じリズムで呼吸を続けていただくと綺麗な画像ができます。

次に撮影した検査画像についてご紹介します。
MRIでは水成分や脂肪成分を含むものは白く、含まないものは黒くなります。
MRCPでは胆汁は水成分に近いため白くなり、結石はほとんど水を含まないため黒く写ります。ただし水成分でも、流れが速い血管の信号は黒くなってしまいます。

では、下の画像で青で囲った)白い部分が総胆管で、緑で囲った)白い部分が胆のうです。
赤やじるし)の部分が黒くなっていますが、ここに総胆管結石と呼ばれる石があります。

総胆管結石があれば、この後ERCPをして治療を行っていきます。
過去に記事も書いているので興味がある方はこちらもご覧ください。

○ERCP検査ってなに??
https://midori-hp.or.jp/radiology-blog/web10_6_05/

MRCPでは空気や胆汁の流れが黒くなりアーチファクト(画像の乱れ)になる場合があります。そして、大きさが3~4mm以下の結石は診断が難しいため、胆道系酵素の上昇などがあれば、超音波検査やCT検査も併用して確実な診断をする場合があります。

〇さいごに

当院でのお腹の検査はオープンMRI(低磁場)で行っているため、他院のドーム型(狭くて音が大きいもの)に比べて検査時間が長くなる場合が多いです。長時間の検査が困難な場合は、検査内容を変更し調整する場合があるので事前にお知らせください。