皆さんは内視鏡検査を受けられたことがありますか?
内視鏡というと多くの方は健康診断でも受ける食道や胃カメラなど消化管検査を思い浮かべると思いますが、当院では呼吸器の先生が肺の内視鏡検査(気管支鏡検査)も行っています。検査前には必ず胸部CTの検査を行っており、気管支鏡検査の時に使用する仮想(バーチャル)内視鏡画像も作成しています。今回はこの画像について少しお話しようと思います。
多くの方は胸部の一般撮影(レントゲン)を撮影し、何か異常があれば精密検査でCTを撮ります。そして気管支鏡検査を受けられる方は、事前に胸部CTを撮っています。通常は5mmの厚さの画像を作成していますが、肺に何らかの炎症や腫瘍など異常が見られる方は、1mmで細かく見える画像も併せてつくっています。
まずは、胸部X線写真をご覧ください。
この写真に病変があるのがわかりますか?
写真を見ただけで分かった方は放射線技師の仕事に向いていると思います。実はここにあります。
分かりましたか?
胸部レントゲン写真で何か異常がある場合は通常より白く映ることが多いです。そして、この後詳しく検査をするため胸部CT検査を行いました。胸部のみだと4~6秒の息止めで検査ができます。
上の画像で矢印(→)の部分が白くモヤモヤと写っていますね。ここに何か異常がありそうです。
そして、この後気管支鏡検査を行うのですが、検査前にあらかじめ撮ったCTの画像を基に事前にバーチャルの画像を作成し、気管支のどの部分へ向かうか事前に予測をおこなっています。まずは先ほどのCTの画像を3Dにした画像をご覧ください。
3D VR(肺+気管支+骨)
3D VR(肺+気管支)
3D VR(気管支)
上の画像で赤い部分が先ほどレントゲン画像やCT画像で白くモヤモヤとなっていた異常部分で、気管支鏡検査でカメラが到達する目標地点です。気管支鏡は口もしくは鼻から挿入し、上の画像の緑色の気管支の中を通って肺の異常がある部分までいきます。
この画像でもある程度の道のりは分かるのですが、気管支はかなり枝が分かれているのでおおまかな位置関係のみしか事前に把握できません。
そこで、バーチャル内視鏡画像の作成を行い、実際の内視鏡のような画像をつくり、より正確にカメラを進められるようにします。分かりやすいように左側に事前のCTでのバーチャル内視鏡、右側に実際の気管支鏡検査のカメラ画像を並べてご紹介します。
▲(左)事前CT検査から構築したバーチャル内視鏡画像、(右)実際の気管支鏡検査のカメラ画像
この患者さんは他院より循環器疾患の精査目的で来院され、レントゲン、CT検査を行いました。その結果、肺に異常な陰影を指摘されたため、呼吸器内科も受診されマイコプラズマ肺炎の診断で治療を行いました。治療後も異常陰影が一部残っていたため、びまん性肺疾患の合併を疑い、追加で気管支鏡検査と組織生検を行いました。
気管支鏡検査の際には、最初に撮ったCTデータを元にバーチャル画像を作成し使用しました。その後カメラと生検データから器質化肺炎と診断され、ステロイド薬治療を行い異常陰影は改善しました。
このように、今回ご紹介したCTのバーチャル内視鏡画像があると、気管支鏡検査を行う際に事前に気管支の分岐の位置と現在のカメラの場所がはっきりとわかり、安全かつ迅速に検査を進められます。当院では、今回のようなCT画像データを使用したバーチャル画像構築は心臓アブレーション治療でも活用しているのでまたいつかご紹介したいと思います。
では、最後に、気管支鏡検査について当院で呼吸器内科治療を担当される増田憲治先生(副院長)にもお話を聞きましたので以下ご紹介します。
〇気管支鏡検査はどのような患者さんにおこないますか?患者さんの負担はどれぐらいでしょう?
→肺の異常な影には腫瘍と炎症があり、炎症なら感染を伴う場合と伴わない場合があります。病気として、肺癌、間質性肺炎、器質化肺炎、肺結核などがあり、これらの多くはレントゲンやCTといった画像検査のみで診断できますが、判りづらい場合や確実な診断を得る時は気管支鏡で病変部の組織を採って調べる必要があります。
患者さんが麻酔で眠っている間に検査をするため、起きる頃には検査が終わっており、しんどいと感じられる方はほとんどいないです。
〇事前CT検査によるバーチャル内視鏡画像は活用できますか?
→バーチャル内視鏡画像がなくてもCTの元画像のみで目的地である病変部まで辿り着くことはできますが、そこまでのルートの把握が難しく時間がかかる場合があります。あると無いとでは気管支鏡検査のし易さが全然違いますし、患者さんの負担も軽減できると思います。
〇入院が必要ですか?
→肺の中に内視鏡を入れるため肺炎と気胸のリスクがあります。
これらの有無を確認するため念のため1泊入院をして頂いています。