胃瘻(いろう)のお話し


こんにちは、地域連携室です。
本日は、みなさんがどこかで耳にした事があるけれど詳しくは分からない胃瘻【いろう】について説明させて頂こうと思います。
皆様は、胃瘻【いろう】という言葉を聞いたことがありますか?
胃瘻とは、お口から食事がとれない人、飲む力の無い人のために直接胃に栄養を入れる為にお腹に作る小さな【口】の事です。
その手術は内視鏡で行う為、お腹に5~6㎜程度の傷がつくだけで出血もほとんどなく手術も5~10分程度で終わります。
局所麻酔の手術で行われるため術後は多少痛みますが、軽い痛み止めで取り除けると言われています。
鼻からチューブで栄養を入れる方法に比べて、吐いたりむせにくくなり外見的にも目立たず、不快感も少なく、入浴可能ですから、ご家庭でも管理しやすい方法として急速に普及しているそうです。

今回私がなぜ胃瘻について書いてみようと思ったのかというと・・・
さかのぼる事4か月前になりますが、入職し初めて担当となった患者様との出会いでした。
その方は施設入所中の方で、施設にて稲荷ずしを食べた際に誤嚥【飲みにくくなることで食べ物が気道に入ってしまうこと】を起こし呼吸困難となり、みどり病院へ救急で搬送されました。
気管に米粒が沢山入ってしまい、誤嚥性肺炎となってしまったのです。
想像するだけで苦しくなってしまいますね・・・。
私たちが普段何気に行っている飲み込むこと嚥下【えんげ】は、高齢になるほど舌の運動機能や噛む力が低下したり、唾液の量が減ったりすることでその機能は徐々に衰えてきます。
嚥下機能が低下すると、誤嚥する危険性が高くなります。
幸いにも、この患者様は治療により一命を取り留めることができました。
第一関門突破!

次は、お口から食事を召し上がれるようになるかの第二関門が立ちはだかります。
高齢の方で一度誤嚥性肺炎となると、お口から食事を召し上がる事は容易ではありません。
みどり病院では、理学療法士・作業療法士が嚥下評価をし、患者様が嚥下ができるかをチェックします。
通常はムセの少ないトロミ茶やゼリーから始めます。

残念ながらこの患者様は第二関門突破とはならず、お口から召し上がることが難しいということになりました。
患者様のご家族と主治医との面談を経て、今後の栄養摂取の方法としていくつかある選択肢の中から胃瘻を造設する決断をされました。
胃瘻造設後、地域連携室相談員の出番がやってきます。
施設へ戻るための調整に入ります。
施設の担当の方からは、多くの質問を投げかけられます。
・胃瘻はどのタイプの胃瘻ですか?
・チューブはどうなっていますか?
・どんな風に注入すればよいのです?
・チューブは交換する際は外来ですか?するのであればいつ交換ですか?
・栄養剤の種類はどのようなものですか?
・どのように注入すればよいですか?  
等々
受け入れる施設も準備万端にするためには、細かく知る必要があるのです。
残念ながら、私は多くの質問に即答できず一旦質問をお預かりする形となりました。
分からないことは、まずは自分で調べる!
調べて分からないことは、先輩や上司に相談する。
ある日、事務所内でそのやりとりをしていると、後ろから声が!
「鷲見さん!ちょっと」振り向くと、主治医がペンと一枚の紙を持ち「教えてあげよう」との声。
“え?あ!はい”驚きのあまり、瞬間、何が起こったか?と思ったほどです。
机を囲み、一つ一つ丁寧に胃瘻についての説明が始まりました。
「ちょっと待ってて」医師は、手術室から胃瘻造設の際に使用する器具やチューブ等を持ってきてくださり公開講座が始まりました。
忙しい医師が手取り足取り教えて下さるまたとない機会に、医師の周りにはいつの間にか事務所内のスタッフで輪が出来ていました。
百聞は一見にしかず、多くの事を学ばせて頂く機会となりました。 

[胃瘻に関するよくある質問]

○お風呂に入れますか?  :シャワーはもちろん全身湯船につかってもお腹に水がはいることはありません。入浴は普通に行い、石鹸でよく洗い清潔に保つことが大切です。
○食事を口からとれますか?:胃瘻を作っても可能な方は口からの食事は出来ますし、むしろ好ましい事です。
○見た目はどうですか?  :胃瘻は鼻から入るチューブの様に顔付近にチューブがありません。見た目も通常と変わりありません。
○元に戻せますか?    :はい、戻せます。
○在宅介護は出来ますか? :はい、できます。
○交換は必要ですか?   :耐久性はありますが異物であることに違いはありませんので約4か月から半年に一回交換が必要となります。

いかがですか?胃瘻について少し理解できたでしょうか?
この私の担当させていただいた患者様は、つい先日、三カ月以上の入院生活に終止符を打ち、ご家族様と施設職員に付添われ無事にご退院されました。本当に良かったです。

この様に、一人一人の患者様の担当を持つことで多くの事を学んでいます。
今回は、胃瘻について深く学ぶチャンスがありましたのでテーマに取り上げさせていただきました。

もう一つ!
みどり病院の地域連携室ですが、他の病院の地域連携室と違う特色があります。
それは、地域連携室は医局と同室にあるということです。
素晴らしい点として、医師との距離が大変近く、医師への相談も容易にできるというところです。
そういう職場環境の為、今回の様に医師の直々の公開講義!をして頂けるチャンスがあったのです。
これからも日々精進し、多くの患者様のお力になれる地域連携室でありたいと思います。
何かございましたらお気軽にお声をかけて下さい。