「住み慣れた地域で過ごす」を支えたい~多様化する社会と地域、病院をつなぐためにできること~

はじめまして。私は2021年6月に入職した社会福祉士のNと申します。今まで障がい者福祉施設、病院、ケアマネジャー事業所で勤務してきました。長らく姫路で生活し、仕事をしてきましたが、生まれと育ちはこの神戸市西区です。姫路に住んでいたのは特別に深い理由はなく、単に「少し地元から離れて一人暮らしをしたかった」だけでした。しかし時間が経つのは本当に早く、仕事にもなじみ、気が付けば私にも自分の家族ができました。やがて「お前も家族を持ったんだ。そろそろ神戸に戻ってこられないのか?」と両親から言われることが増えてきました。

長年、姫路で勤務しており、いろいろな経験をさせて頂きました。その中で徐々に「自分は、地元 神戸市のことを何も知らないのでは」「社会福祉士として、自分の生まれ故郷の社会を何も知らないのでは」という思いが芽生え、やがて「地元の神戸市で仕事をしたい」と思うようになりました。そしてこの度、縁があり、この神戸市西区にあるみどり病院で勤務させて頂くことになりました。

新しい環境で不安もありましたが、みどり病院の先輩達はとても親切で、地域の患者さん1人1人を大切にする気持ちがスタッフの言葉の端端から伝わってくる職場で、和気あいあいとした空気のなかで指導いただいております。

これまでは療養病院での勤務が長かったので、直接患者さんとではなく、ご家族と面談をすることがほとんどでした。療養病院に入院される患者さんは意思疎通が難しい方が多く、どうしてもご家族とお話しすることが多くなりがちでした。ケアマネジャーとして勤務したことで“直接利用者さんと接する”ことの大切さを痛感させられました。だって、私たちの人生の大先輩なのですから。いろんなお話や考え方を聞かせて頂き、仕事以外の部分でも大変勉強になりました。

そして今、地域の急性期病院で勤務させて頂き、日々患者さんの病室へ足を運び、お話をし、患者さんはもちろんご家族や担当されているケアマネジャーとお話しする機会が増えました。地域性も神戸と姫路では全く違います。本当に一日一日が新しい出会いと勉強です。

ある日、救急で入院された90代の女性の方がいらっしゃいました。ご主人を亡くされてからはお一人暮らし、身寄りも誰もいないとのことで、ケアマネジャーさんから情報をいただきました。意思疎通も難しく、身寄りもない救急患者さん。どう支援していいのか分からず、慌ててしまったことを覚えています。

在宅で担当されていたケアマネジャーさんと情報交換をして、同じ地域連携室の先輩方に相談をして、病棟看護師からもアドバイスを得て、一つずつ問題を解決できるよう取り組みました。私にとって多くの学びがあった出来事でしたが、成年後見制度・介護保険の変更・施設との連携などを活用し、無事患者さんは退院し新たな生活環境を調整することもできました。

また自宅で過ごせる能力や環境があるのに、それでも「施設に入って暮らしたい」と言われる患者さんもいらっしゃいました。ご家族に迷惑をかけたくない、という一心でそう話されていたのです。しっかりと傾聴し、“なぜそう思ったのか“を一緒に考えることで本当に良い選択肢が選べるように支援しました。一人暮らしの高齢者や高齢者世帯が多い地域ならではのエピソードでした。

他にも経済的に困窮しているにも関わらず「国のお世話になりとうない」と気丈に振舞われる患者さんや、とても一人暮らしができる状態ではないと思われるのに「一人暮らしが良いから(自宅に)帰る!」と話される患者さんなど、教科書通りではなく、生身の人間の思いや暮らしに基づいた様々な医療課題を肌で実感する日々です。

みどり病院へ入職して7か月が経った現在、馴染みのある地域で行う業務の一つ一つが、「地元に帰ってきたんだなぁ…」といった実感につながっています。これからも、自分が生まれ育ったこの“住み慣れた地域”で、同じ“住み慣れた地域”で過ごす患者さんを支援していけるよう、努力していきたいと思います。