対面もオンラインもお互いの「顔」が見える地域連携を〜会えなくても近い、会えたらもっと近いを叶えるために〜

新型コロナウイルスによる緊急事態宣言から3年が経ちましたが、流行の波を繰り返しながら現在に至ります。2023年5月に5類感染症となる発表がありましたが、今も完全な終息とはなっていません。

これまで当院も先の見えない状況で退院支援を行ってきましたが、退院にあたってご家族様やケアマネジャーはじめ地域生活を支えるスタッフと直接会うことができない状況が続いていました。そこで当院の取り組みとしてオンライン会議システム等の利用をし、病院と外部をつないでやり取りをするオンラインカンファレンスを始めました。

これまでもオンライン通信システム等を使う機会はありましたが、自分たちが主導となって会議を行うとなると、それまでにはない経験や失敗などがありました。
例えば、院内でもWi-fiの電波が届かない部屋があり、カンファレンスが始まってから違う部屋を探したこともありました。患者様が車いすに座れる方であれば移動も可能ですが、車椅子に座れない方であれば、ベッドのまま部屋移動を行うことになります。

他にも思うようにケアマネジャー側と通信ができなかったり、IDやパスワードを間違えていたため、結局電話でやり取りしながらセッティングをしたりしたこともありました。
更にはコンピューター上で不手際なく進めていても、患者様が画面越しの面会が難しいこともありました。ご家族が一生懸命「お母さん、私だよ。早く良くなってね!」と患者様に画面越しで声をかけてくださっても、モニターに映っている方を自分の娘と認識できず、ご家族が少し悲しい思いをしたことがあります。きっと直接顔を見て、手を握って、耳元でゆっくり話すことができれば通じたのではないかと思います。

感染予防という点ではこの先も必須になりますし、移動時間の短縮や遠距離のスタッフとも時間調整が容易に行えるため、利点はあります。神戸市西区にある当院と加古川にある施設とリアルタイムでカンファレンスができた時には、オンラインカンファレンスの利便性を強く感じました。その反面「その場の空気感」などは伝わりにくいこともありますし、カメラの関係上、一度に映せる人数や範囲が限られているため物理的な制約があるのもデメリットとして感じました。

コロナ禍で書面や電話のみでやり取りをしていた時と比べると、患者様をモニター越しに見て頂くことで、言葉だけではなかなか説明しづらいことも分かりやすく伝わります。またカンファレンス時で尚且つモニター越しであっても、家族と会えると患者様は喜ばれますし、ご家族様も入院中の様子が分かってご安心されることが多いです。

このように実際にオンラインカンファレンスを行ってみてわかったのは、「人と人」が関わり、相互理解を深めることの重要性を再認識しました。オンライン通信は一つの「手段」であって、技術が発達してもそれを使って支援を行うのは「人」ですから、「手段」が変わっても行う支援や連携は変わらないことが分かりました。

何となく新しい技術やオンラインというとちょっと億劫な気持ちになったのも事実ですが、慣れて上手に活用していくことが大切ではないかと思います。今後もこういった新しいことに挑戦する必要が出てくると思いますが、柔軟に対応していくことが大切だと思いました。