「飲み込めない」「しゃべれない」を助けたい〜病院と老健施設での言語聴覚士の役割〜

私がみどり病院に入職し、1年と半年が過ぎようとしています。今回の入職にあたり、今までと違ったことは、当院と同法人である介護老人保健施設「みどりの丘」と兼務だったことでした。今回は病院と施設での言語聴覚士の役割について、1年半の経験を通して感じたこととともに、お話しようと思います。
まず、言語聴覚士についてです。ST(Speech Therapist)と呼ばれることもあります。言語聴覚士は病気や障害など、何らかの理由によって、言葉や飲み込むことに問題が生じた方に医師の指示のもと、リハビリを行います。
みどり病院では、リハビリの対象となる方は様々ですが、食事に時間がかかる・むせて食事が食べられないといった、飲み込みの問題(嚥下障害)がある方を担当させていただく機会が多いです。嚥下障害のリハビリは、うまく食べられない原因の評価を行い、唇や舌など、食事に必要な器官の運動訓練・食事方法の指導や介助、安全に食べられる食事内容の検討などを行います。写真のお食事はその一例です。

次に、介護老人保健施設についてです。略して老健と呼ばれることもあります。老健は主に、要介護者が在宅復帰を目標として入居される施設のことです。老健は病院と自宅の中間的な役割があり、一般状態が落ち着いた方が多いことも一因なのか、リハビリの対象は嚥下障害に比べ、うまく話せない・言葉が出てこないといったコミュニケーションの問題(言語障害)の方を担当させていただく機会が多い印象です。言語障害のリハビリは、話すために必要な顔面の動きや呼吸の練習、文字や言葉を思い出す練習、職員やご家族様にコミュニケーション方法の指導などを行います。一方、口から食事を取れなくなり、胃瘻造設術により胃から直接栄養を摂取されている方も、合併症予防を目的に、口腔ケアや食べ物を用いない間接嚥下訓練の介入を行っています。

病院は治療優先の上でのリハビリであり、退院先が状態により変動するため、迅速に評価・見通しを立てる必要があります。一方老健は基本的には一般状態が落ち着いており、在宅復帰を目指すリハビリということで、問題点を掘り下げ対策を講じる必要があります。
それぞれ求められる役割は、病院は機能評価・訓練を行い次の段階へ繋ぐこと、老健は機能維持・向上を行い環境調整することではないかと考えています。1年半が経過した今、1日の流れやリハビリ内容の割合の違いはありますが、病院と施設でのSTの業務内容としては大きく変わりはないように感じています。病院でしか勤務経験のない私にとって、老健での仕事は未知数であり、兼務ということもあり不安が強い状態でした。そんな私が今もこうして働くことが出来ているのは、あたたかく迎えてくれた職員、患者さん・利用者さんの支えがあってのことだと思います。
病院と施設、双方の情報を得られる兼務の立場を最大限に活かし、今後も皆さんの「自分でできる」を応援していきます。