理学療法士が考える散歩の歩数とは!?

みなさんは運動の習慣化ができていますか?「そろそろ運動しないとな」「健康のために運動をしたい」「ダイエットのために運動を始めたい」と言う声が多く聞かれます。しかしその悩みをかかえている人は「具体的にどのような運動をすればいいかわからない」とよく話されています。

また、「運動が良いのはわかるけど、何がどう効果があるのかわからない。」と言う方も多くみられます。コロナ下ではジムなどを始めとした、不特定多数の人が利用する屋内施設の利用も消極的になりがちではないでしょうか。今回は運動の効果や、屋外で気軽に始められる運動「散歩・ウォーキング」を中心に話し、歩く際の目標心拍数についても理学療法士の視点からアドバイスしたいと思います。

①運動をすることによる身体への効果

身体活動量の多い方や、運動を良く行っている方は、虚血性心疾患、高血圧、糖尿病、肥満、骨粗鬆症、結腸癌などの罹患率が低いこと、また、身体活動が、メンタルヘルスや生活の質の改善に効果があることが認められています。その様なこともあり、運動を行うことで健康的な身体を作り上げることが可能となります。

②運動を習慣化している人の割合

厚生労働省が発表している令和元年の国民健康・栄養調査報告では、すでに運動習慣の改善に取り組んでいると回答した割合が最も多く、男性34.3%、女性40.5%でした。これらの数値は年齢が高くになるにしたがって上昇傾向がみられています。つまり、年齢を重ねるにつれ、運動に興味を持ち、実行する人が増えてきているという風に捉えることもできます。

③歩数・歩行時間

上記にも挙げている令和元年の国民健康・栄養調査報告には、「歩数の平均値は男性で6793歩、女性で5832歩であり、この10年間でみると、男性では有意な増減はなく、女性では有意に低下している。65歳以上では男性5396歩、女性4656歩である。」と報告されています。厚生労働省は1日当たりの目標歩数を男性は9200歩、女性は8300歩と掲げており、大幅に足りていないことが分かります。

厚生労働省が発表している健康21(身体活動・運動)でも、週当たり2000Kcal(1日当たり300Kcal)以上のエネルギー消費に相当する身体活動が推奨されており、歩行における300Kcalのエネルギー消費は1万歩に相当します。
これらの結果から、1日約9000歩から1万歩を目標に歩くことが良いということが分かります。よって、日常生活での歩数が9000歩以下の方は、散歩等で歩数の調整を行うのが良いでしょう。

人は1000歩歩くのに約10分程度かかると言われているので、日常生活で5000歩しか歩かない人が1万歩を目指すとなると、5000歩、つまり50分程度の時間が必要となります。しかし、夏になり気温が上昇している中で50分も連続で散歩をするとなると、暑い時間を避けても熱中症等の危険がありますし、連続してそこまで時間が取れない方も少なくないと思います。そのような方に実践していただきたいのが「細切れ運動」です。細切れ運動は生活習慣病の方にも推奨されている運動方法で、短い時間集中して運動が出来るというメリットもあります。

また、継続して運動を行った場合と効果は変わらないとされています。例を挙げると、50分運動する場合、25分を2回に分けたり、10分を5回にわけることで、1日トータル50分運動時間を確保するといったことになります。細切れ運動であれば、暑い時期は熱中症対策にもなりますし、日常生活の隙間時間を有効的に使えるのではないでしょうか。

④目標心拍数と負荷のかけかた

歩く際、何も考えずに歩くよりも、何か目標とする負荷の指標があった方が良いという方も多くいると思います。そこで、今回はカルボーネン法を用いてその人に合った歩く際の目標心拍数の測り方をお伝えしたいと思います。

カルボーネン法とは、1分間の安静時心拍数から自分が歩く際の目標心拍数を割り出し、運動強度の目安とする方法で「((220-年齢)-安静時心拍数)×運動強度%+安静時心拍数」で計算することができます。例えば、50歳の人で安静時心拍数が60回/分、60%程度の負荷量をかけたい場合であれば「((220-50)-60)×0.6+60」となり、目標とする心拍数は126回/分となります。なので、歩行する際、60%程度の負荷を与えたいときは脈拍が126回になるのを目指して歩くといいでしょう。

負荷のかけかた(運動強度)をどのように設定していくのが良いかというと、最初は30%から初めて、徐々に自分に合った負荷量に上げていくのが良いでしょう。普段から活動的な方は50%、運動不足を感じる方は40%、安静時心拍数80回/分以上の方や足腰の筋力低下がある方は30%程度を目安に始めてみる事をオススメします。

今回は運動・散歩の歩数について考えましたが、皆さんは1日どれぐらい歩いていますか?暑い時期に入り、熱中症や脱水に注意しながら、これからの健康のために運動習慣を見直してみましょう。

リハビリテーション科はあなたの“自分でできる”を応援します。