福祉用具の利用方法をご存知ですか?~用具を導入し、自立した生活を目指す ①排泄用具編~

今回は、福祉用具についてのお話をしたいと思います。私は、患者さんによく福祉用具の提案をするのですが、「こんなもの(福祉用具)もあるんですね。」と言われることが多くあります。実際皆様も、福祉用具と聞いて頭に思い浮かべるのは、杖や車椅子、手すりが多いのではないでしょうか。でも実は、福祉用具はこの記事の中ではお伝えしきれないほど種類豊富なのです。

また、次に聞かれることが多いのは「福祉用具を使うにはどうしたらいいのですか。」です。福祉用具を利用するには、いくつか知っておかなければいけないことや、制度上の決まりがあります。今回の記事では、利用方法のお話に加え、福祉用具の中でも、患者さんへ提案することが多い排泄用具の紹介をしたいと思います。

福祉用具とは

まず、はじめに福祉用具とは何かについて説明します。福祉用具とは、介護が必要な方の日常生活を助け、リハビリなどで行う身体機能訓練で使用する用具のことです。病気やけがにより後遺症が残った状態でも、ご自宅で自立した生活を送れるようにする福祉用具は、保険給付の対象となっています。介護保険を利用し、福祉用具をレンタル・購入することができます。

厚生労働省によると、介護サービスの受給者数は、平成30年で607万人であったのに対し、令和3年では648,3万人へと増加しているそうです。また、介護度別でみると、要介護2以下の方が約6割を占めているという報告もあります。高齢者の増加とともに介護サービスの受給者数は年々増加傾向にあるようです。

実際に患者さんと関わる中で、介護保険を利用し、介護サービスを受けている方は沢山おられます。その中でも、福祉用具のレンタルや購入のみを利用されている方が多い印象を受けます。また、福祉用具を利用されている方からは「福祉用具を使って生活が楽になった。」など導入してよかったという声をたくさんお聞きします。

福祉用具を利用するには

では、実際に福祉用具を利用するためにはどうすればよいか、利用する際に知っておかなければいけないことについてお話していきます。まずはじめに、介護保険制度を利用するためには、介護保険の取得が必要になります。現在介護保険を持っていない方で福祉用具の利用やその他介護サービスの利用を希望されている方は、お住いの市区町村の窓口で介護認定の申請を行ってください。

介護保険がなくても、自費購入して福祉用具を利用することは可能ですが、介護保険を取得していると、利用者の負担割合に応じた金額(1~3割負担)で福祉用具のレンタルや購入をすることが可能になります。介護保険取得後1人1人に担当のケアマネジャー(介護支援専門員)が就き、福祉用具のレンタル・購入を希望された方や必要と判断された方に、利用に際して必要な手続きの案内をします。まずは担当のケアマネジャーへ福祉用具を利用したい事を相談してみてください。福祉用具利用までの流れは下記の様になります。

次に、利用する際に知っておかなければならないことについてお話します。それは、福祉用具には介護度によってレンタルできるもの・できないものがあることです。介護度は、介護度が低い順から要支援1・2、要介護1~5と段階付けられています。要するに、介護度が最も低い要支援1の方と最も高い要介護5の方では、レンタルできる福祉用具が違うということです。なので、「こんな福祉用具を使いたい!」と希望してもその時の介護度によっては利用できない場合もあります。

また、福祉用具は、レンタル用具と購入用具に分けられます。(上記表で挙げているものは、全てレンタル用具です。)
では、レンタルできるものと、購入しなくてはいけないものにはどういった違いがあるのでしょうか。それは、直接肌に触れるものか・そうでないかで分けられており、排泄や、入浴時に使用する用具については、原則購入していただくことになっています。

介護保険で福祉用具を購入する際は、利用者へ上限額10万円の購入費が支給され、購入価格の1~3割負担で購入することができます。(1年間で10万円の限度額を超えた場合は、全額自己負担になります。)購入時に利用者が、一旦全額(10割)を支払い、購入後に市町村の窓口で請求し、払い戻し(7~9割)を受けるという流れになっています。

日常生活で欠かせない排泄…どんな福祉用具があるの?

福祉用具の中でも、生活には欠かせない排泄用具。その中でも患者さんに提案することが多い排泄用具の種類と知っておくとより快適になる関連用具について紹介します。

・ポータブルトイレ

“持ち運び可能な簡易型トイレ”です。歩行が不安定な方・夜間排泄回数の多い方などが、トイレまで歩いて行くことが困難な場合に使用することが多いです。
ポータブルトイレにはたくさんの種類や機能があります。それぞれの特徴について紹介していきます。

<種類>

①プラスチック標準型
軽量で、持ち運びやすくお手入れがしやすいのが特徴です。軽量である分安定性にかけるため、立ち座りが安定している人におすすめです。

②木製いす型
このポータブルトイレは“家具調ポータブルトイレ”とも言われています。蓋を閉めることで、排泄時以外は椅子としても利用でき、インテリアにもなじみやすいのが特徴です。重量感があるため、立ち座りが不安定な方におすすめです。

③金属製コモード型
比較的軽量のため持ち運びしやすく、座面の高さ調整が簡単で、お手入れがしやすいことが特徴としてあげられます。

④スチール製ベッドサイド設置型
座面の高さ調整がしやすく、片側の手すりがないことでベッドとトイレ間の横移乗がしやすいのが特徴です。こちらは、重量があり、持ち運びや移動が困難になります。

<機能>

※機能は、ポータブルトイレの種類によって異なります。

  • 座面の高さ調節
    体格や身体状況、自宅の環境などに合わせて座面の高さを調整することができます。
  • ひじ掛けの取り外し
    ベッドとトイレ間の横移乗の際にひじ掛けを外したり、上に跳ね上げることができます
  • シャワー洗浄
    おしりが拭きにくい際にシャワー洗浄機能をつけることができます
  • 脱臭・ラップ処理式
    排泄物をラップで密閉することができます。自動型と手動型があります
    ※ポータブルトイレ使用時の脱臭用具として、“消臭スプレー”や“除菌消毒液”なども販売しています。
・簡易洋式便座

和式便座の上にかぶせることで、和式から洋式便座に変更する用具です。足腰が弱ってしまい、和式便器では排泄が困難になった場合に使用します。便器をかぶせるだけなので、工事不要で取り付けることができます。

・補高便座

洋式便座に取り付けることで、座面を高くすることができます。座面が高いと便座からの立ち上がりがとても楽になります。

・尿器

寝た状態やベッドに腰かけた状態で排泄することができます。男性の排尿の際は“尿瓶”
女性の排尿・男女ともに排便の際は“差し込み便器”を使用します。尿器をベッドの柵などにひっかけておくことができる“尿器掛け”というものもあります。

・排泄予測支援機器

下腹部(膀胱の辺り)に専用ジェルを塗布し、その上から排泄予測支援機器を貼り付けると、超音波を利用し、膀胱に尿が溜まったことや、すでに排尿してしまったことがこの機器と連動している携帯などに通知が届く用具です。排尿のタイミングを事前にお知らせすることで、失敗を減らし、自立した排泄を支援します。

この用具は、2022年4月から介護保険で購入できる福祉用具の対象となりました。支給条件は、①介助者が通知により、トイレへの誘導を適切なタイミングでできることにより失敗を減らし、排泄が自立すること。②利用者本人が通知を受けて適時にトイレで排泄ができることが挙げられています。

―最後にー

福祉用具は、病気やケガによる後遺症がある状態でも自立した生活を助ける・生活をよくするための用具なのですが、実際患者様に福祉用具を提案すると「こんな大層なことしなくても…」や「今はできなくても家に帰ったらできるから要らない」などと抵抗を持たれている方が多い印象を受けます。でも、そう思われることは、普通だと思います。元の慣れた自宅の環境や、習慣を変えるわけですから…。

そのため、はじめは「いざというときには、こんな便利なものがあることを知っておく」ところからでいいと思います。例えば、自宅に帰られてから、「トイレに行けない…どうしよう…」となった時に、対応方法を知っておくだけでも安心かと思います。

今回は、排泄用具を紹介させていただきましたが、冒頭でもお話したように、福祉用具は他にもたくさんの種類があります。次回の記事では、食事や入浴で使用する福祉用具などについてお話ししていきたいと思います。

種類が豊富な福祉用具。これからも、一人一人の状態や生活に合った用具の提案や、患者さんとその患者さんを助けてくれる周囲の人全員が少しでも楽に、元の生活に近い生活を送れるような支援をしていきたいと思っています。
~私たちは、あなたの自分でできるを応援します~