食べることを助ける自助具~いつまでも楽しく自立した食事を目指して~

はじめに

今回は食事の際に使用する自助具についてお話したいと思います。自助具とは、病気やケガなどで生じる日常生活動作(排泄や食事など身の回りの動作)の中での能力低下を補助する道具です。病気やケガなどをきっかけに、今まで当たり前にできていた動作が突然できなくなることは、身体だけでなく精神的にも負担がかかります。

そのなかでも特に食事動作へ支障が生じるということは、ストレスがかかるだけでなく、食べることへの意欲低下にも繋がりかねません。そんなストレスを少しでも軽減させ、元の自立した生活に近づけることを助ける様々な自助具を紹介していこうと思います。

食事動作について

普段何気なく行っている食事動作ですが、食べるために体を起こし、食べ物を口に運ぶために手や腕を動かすなど、様々な運動機能が必要になります。そのため、食事を自力で行うことは、身体機能維持にも効果的と言われています。

-食事を口元に運ぶまでに必要な動作-

①食具を持つ
スプーン:親指、人差し指、中指の三本指で持つ
お箸 :親指、人差し指、中指、薬指をバラバラに使用しながら持つ

②食べ物をすくうorつまむ+反対の手でお皿を支える
スプーン:手首を捻りながら食べ物をすくう
お箸 :小指と薬指で下のお箸を支えながら残りの三本で上のお箸をコントロールし、食べ物をつまむ

③食べ物を口元まで運ぶ
肩・腕を挙げ、口元に食べ物が入るように手首や肘を曲げる

食事動作は、健康な状態であれば自然と行えますが、病気や症状によって、様々な困りごとを生じます。例えば、脳梗塞により運動麻痺を生じることで、手に力が入らずスプーンを持てない方もいれば、骨折によって肩が挙がらず口元まで食べ物を運べないことに困っている方もおられます。また、運動機能が保たれていても、認知症や脳梗塞の影響で、お皿の位置や食べ物の認識が乏しくなり、一人で食べることが困難になる方もおられます。

自助具は、身体や認知面に障害が生じている方に対し、機能評価を行い、その身体機能に対応できるようなものを選びます。どんなことに困っているかをしっかり把握したうえでその方の残存能力に合ったものを選ぶことが重要となります。

食事動作に必要な自助具の紹介

<お箸の自助具>

お箸を使うときの手の動きである①持つ ②動かす ③コントロールする の3つの動きの負荷を軽減したり、なくす構造になっています。運動機能障害により指の分離運動が困難な方でも、手を握る・開くができる方であれば、単純な指の動きでお箸を操作することができ、箸先がクロスすることなく軽い力で使えます。工夫された箸先でがっちりと食べ物をつまむことができます。

<スプーンの自助具>

スプーンの柄にスポンジがついていることで握りやすく、手に力が入りづらい方でも持ちやすくなっています。また、ネックの部分を軽い力で好きな方向に曲げることができるため、手首が動かし辛い方でも簡単にすくうことができます。また、角度がついていることで食べ物がスプーンからこぼれにくくもなります。スポンジは取り外すことができるので、用途によって他の食具に付け替えることも可能です。

<お皿の自助具>

お皿の底が傾斜していたり、お皿のふちに返しがついていることで片手でも楽に食事ができるように作られたお皿です。3つに仕切られているお皿は、副菜、主菜、ご飯をワンプレートで提供できるため、運動機能が低下し置かれたお皿に手が届かない方や、認知機能が低下しお皿の置き場所の認識が難しい方が一か所に食べ物が集まっていることで、集中してスムーズに食べられるようになっています。また、裏側に滑り止めがついている為、支えがなくても、お皿が滑ることなく食べることができます。

自助具の購入方法

介護保険を利用して使用できる福祉用具は、車椅子、押し車、杖、介護用ベッド、ポータブルトイレ、簡易浴槽などが挙げられます。これらは移動や排泄、入浴動作を支援するもので、食事動作に関する福祉用具は入っていません。

そのため、食事動作に支援が必要な場合は、自助具の導入をお勧めしています。介護保険を利用してレンタルや購入をする福祉用具とは異なり、自助具は全額自費となります。自助具は、介護用品ショップや、福祉機器を取り扱う店舗、インターネットなどの通販販売サイトから購入することができます。

おわりに

今回お話した自助具を食事動作に困っている患者さんへ試してもらうと「食事が億劫だったけど、食べやすくなってうれしい」や「自分で食べられるようになってうれしい」など自力で食べられることに喜ばれる方が沢山おられました。

食事は自力で自分のペースで食べる方が美味しく感じると思います。病気やケガにより自力で食べることが難しくなっても、食器を一つ自助具に変えることでそれが叶うこともあります。少しでも多くの方にできるだけ楽しく美味しくご飯を食べていただくために、これからもその人に合った自助具の提案をしていきたいと思っています。

また、自助具としてではありませんが、介護用の食器や食具として、いろいろな商品がホームセンターや百円均一ショップなどでも売られているので、興味がある方はぜひ見てみてください。
みどり病院リハビリテーション科は、「あなたの自分でできる」を応援します。