呼吸サルコペニアって知っていますか?~年齢とともに弱くなる呼吸する力~

“サルコペニア”という言葉をご存じでしょうか。 “サルコペニア”とは加齢に伴い筋肉量が減り、筋力の低下や身体機能の低下を引き起こす病態のことを指しますが、実は呼吸の時に使う筋肉(呼吸筋)にも生じることがあり、これを“呼吸サルコペニア”と呼びます。

“呼吸サルコペニア”は「呼吸筋の筋量減少と筋力低下の両方が示唆される病態」と言われていますが、高齢者では全身性のサルコペニアが生じていなくても、呼吸筋力の低下は高い割合で認められるという報告もあります。

【呼吸筋が低下するとどうなるの?】

日常的に呼吸筋は働いており、息を吸うときには〔横隔膜〕という筋肉が働き、息を吐くときには〔横隔膜〕が緩むことで呼吸が行われます。深呼吸や咳をする際には横隔膜に加えて腹筋等の複数の筋肉が働きます。この呼吸筋が低下することで『運動耐容能の低下』『咳嗽(がいそう)力の低下』などの問題が起きてきます。

▶運動耐容能の低下
運動耐容能とは長時間にわたり運動に耐えられる能力のことで、運動耐容能が低下することで持久力の低下を招きます。呼吸筋力が低下することによって運動時に大きく息を吸うことが難しくなり、少しの運動で息切れが生じ疲れやすくなるため、持久力が低下していきます。その結果、身体活動量は減少していき生命予後の悪化につながることもあります。

▶咳嗽力の低下
咳嗽力とは咳をする力のことです。強い咳をする時には大きく息を吸って勢いよく吐き出す力が必要で、呼吸筋である吸う力(吸気筋)と吐く力(呼気筋)が重要となってきます。咳嗽力が低下することで誤って気管に入った食べ物や水分を咳で押し返すことができなくなり、誤嚥性肺炎を発症するリスクが高くなります。
日本の死亡原因の第5位は肺炎、第6位は誤嚥性肺炎であり、65歳以上の肺炎の約7割は誤嚥性肺炎とされています。咳嗽力の低下は生命予後にも大きく関わってくるのです。

【呼吸筋を鍛えるにはどうしたらいいの?】

ある研究では「呼気筋力低下」よりも「吸気筋力低下」のほうが肺炎発症に関わることが示唆されたそうです。吸気筋である〔横隔膜〕を鍛えるトレーニングの一例を載せましたので参考にしていただければと思います。

《方法》
①鼻から大きく息を吸い込んでいき、お腹の上に置いた手を押すようにお腹を膨らませていく。
②ゆっくり口から息を吐いていき、お腹を自然にへこませる。
③10回を目安に行ってください

※息を止めずに無理のない範囲で行ってください
※息苦しさや胸痛が出現した場合は運動を中止してください
※重篤な心血管系疾患の方や高度の呼吸器疾患の方は医師に相談してください

【最後に】

今回は理学療法士が関わる事の多い、呼吸筋・呼吸サルコペニアについてご紹介させていただきました。日々のスキマ時間でトレーニングを取り入れていただければ嬉しく思います。
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