第33回ヨーロッパ胸部心臓血管外科学会(リスボン)に参加して
みどり病院心臓弁膜症センター 岡田 行功
第33回ヨーロッパ胸部心臓血管外科学会(EACTS)がポルトガルのリスボンで開催された。EACTSの弁膜症関連の会場では、新しい治療技術としてカテーテルによる僧帽弁置換術(TMVR)がライブで紹介された。TMVRは日本でも臨床症例が増加しているカテーテルによる大動脈弁置換術(TAVR)とは異なるもので、基本的に弁血栓症、左室流出路狭窄の合併症が解決されておらず、道具の開発、患者選択に大きな問題があるようである。僧帽弁クリップは遠隔期の再発が40-50%にみられるので、75歳以下の若年者では80歳以降の僧帽弁逆流再発、心不全に対する治療法が必要となるが、現在では開胸による人工弁置換術しかないのが現状である。機能的三尖弁逆流で他の心臓疾患と併せて三尖弁形成する症例の適応基準は拡大され、高度三尖弁逆流で浮腫や肝臓機能悪化症例では手術成績が不良であることから僧帽弁クリップと同様なカテーテル治療が報告されたが、満足できるカテーテル治療はない。したがって高度三尖弁逆流症例に関しては、症状や臓器不全の進行する前の外科治療が推奨されるところである。心臓弁膜症の治療は心不全症状が進行する前の外科治療が基本であるが、高齢者で臓器機能が低下して外科治療の適応のないと考えられる患者さんでも内科治療、カテーテル治療が試みられている現状が紹介された。カテーテル治療の進歩は目を見張るものがあり、ヨーロッパでは米国よりも積極的に臨床応用が行われ新しい知見が得られる環境にある。来年の34回EACTS(バルセロナ)が楽しみである。