希の丘の玄関、カフェ、受付にはいつも花があります。
訪れた方をいつも迎えてくれるのは花たちです。
ここで生活をされている方を笑顔にしてくれるのも花たちです。
Kさん(90歳、女性)は28年9月に希の丘に入居されました。
ご主人が亡くなられて7年ほどお一人での生活をされてきたのですが、28年7月に脱水症になられ入院されました。
退院後の一人暮らしをKさんは望まれたそうですが、以前の生活をするのは難しいと考えられた家族様がKさんを説得され、こちらへの入居となられました。
入居の一日目は、心配そうな表情で、ここでの暮らしに不安を感じていると話されました。
そうこうするうちに日々は流れ、Kさんはここでの暮らしを楽しまれるようになられました。
入居1日目の心配はどこに行ってしまったのか?という感じで、仲の良い友人もでき、一緒に入浴されたり、散歩に出かけたり、誰よりもリーダーシップを発揮され、皆さんを誘って壁画作成、ゲームなど先頭に立って声をかけてくださいます。
調理の手伝いも頼むと断わられることはありません。
春にはいかなごの佃煮を調理してくださいました。
今年のいかなごはお値段が高く、貴重なものでしたが、Kさんのおかげでおいしくいただくことができました。
朝は皆さんの部屋のドアをノックして、朝食のお誘いをしてフロアに出てきてくださいます。
夜勤者は各フロアに1人勤務の為、皆さんに声をかけてくださるのはとても助かっています。
Kさんは私たち職員にとって頼みの綱です。
私は時々調理台に立つのですが、そのときは必ずKさんに補助をお願いします。
玉ねぎの調理があるときは特にお願いしています。
以前、涙を流しながら玉ねぎを刻む私を見かねたKさんが手早く玉ねぎのみじん切りをしてくださいました。
困っている人を見かけると放っておけない姉御気質なKさんに助けていただきました。
Kさんはここでの暮らしを楽しんでおられるのですが、ただ一つ、困りごとがあります。
ご自身で片付けされたのですが、それを忘れてしまい、「誰かが知らないうちに部屋に入り、物がなくなった」と言われることがよくあります。
このことは、ここへ入居される少し前から言い始められたそうで、家族様、Kさんの困りごとになっています。
一人暮らしを続けるのが難しいという原因のひとつがこの困りごとです。
その困りごとの対応については、Kさんが入居されてから現在も皆で取り組んでいます。
まずゆっくりと話を聴かせていただく。
以前事務所でKさんのお話を聴かせていただいたのですが、Kさんの歩んでこられた人生、甥や姪を一生懸命育てられたこと、亡くなったご主人に尽くしてこられたこと、ここでの暮らしは、友人も出来、私たちスタッフの顔も馴染みができて楽しく暮らせているが物がなくなるように感じることだけが気がかりだということ。
ご主人の仏壇が気になり、参ってあげたいこと。
家の周りの草木が生い茂っているのではないか?など心配で一度家に帰りたいと話されました。
その時のKさんはとても一生懸命で心配な気持ちが伝わり、聞いている私は気づいたら涙を流していました。
どうにか無くなってしまったと思われているものをどこかにしまいこんでしまったのではないですか?と話し、一緒に探したりします。
たいがいは見つかることが多いですが、Kさんにとってはとても不安なことだと思います。
なくなったのでは?ということを忘れてしまえるように夢中になれることをしていただくように退屈な時間を減らし、活動的に過ごしていただくように取り組んでいます。
そして何より、若い頃に華道、茶道の師範をされていたそうで、希の丘の生け花をお願いしています。
生け花をされるときのKさんはとても活き活きとされており、斬新で大胆な生け方をしてくださいます。
私は花のことは全くわからないので、いつも感心させられます。
色々お話を伺うと、Kさんの困りごとの解決法を見つけたい。
そして安心してここでの暮らしを楽しんでいただきたいと願う気持ちでいっぱいです。
これからもKさんの気持ちが少しでも和らぐようにお手伝いできたらと思い、ここで勤めていきたいと思います。
今日も素敵に花を活けていただきました。退社の時に花に見送ってもらいます。