ヘルパーによる緊急時・災害時の対応と備え~第100回ヘルパー研修~

今回は、先日開催した第100回ヘルパー研修で学んだことを報告します。

まず、緊急時の対応について学びました。

―ヘルパーによる緊急時の対応―

私たちヘルパーは業務における「緊急時の対応」に備えて、観察力を身につけ、ご利用者の心身の状況の変化をいち早く察知することがとても重要です。「観察力を磨く」ためには、次の3つの視点からの考察が求められます。

≪3つの視点≫

救急搬送・入院の前に考えておくこと。普段の様子を把握することが重要!
① 「利用者にとって最良の対応とは?」を考える。
② 「緊急時の一歩手前で食い止めるには?」を考える。
③ 「医師の判断(考え)は?」を考える。

救急搬送による入院が引き金となり、ご利用者が入院前より意識の低下や下肢筋力の低下を引き起こすことがあります。勿論、脳卒中や心臓発作の様な既往症や症状がある場合は緊急対応を迅速に行わなければなりません。入院をする必要がない場合であっても、ヘルパーがパニックになり救急搬送を要請してしまうことを防ぐために日頃からご利用者の観察を行うことが重要と言えます。

普段から観察することにより「いつもと違う」に気付くことが出来ます。ご利用者の病状悪化や急変に対応することもできます。ご利用者の普段を知っているヘルパーだからこそ医療的な検査だけでは分からない情報が分かるのです。認知症を発症された方や自身の体調の変化を上手く伝えられない方も少なくありません。ヘルパーが医療的な検査だけでは判断できない普段の情報を正しく伝えることにより、緊急性が高いか低いかを医師が判断するヒントになることもあるでしょう。

―緊急時の一歩手前で食い止めるには―

≪ヘルパーによる観察≫

緊急な事態に至るのをさけるため早い段階で「いつもとちがう」に気付き、その変化を訪問看護や主治医に繋げることが大切です(慌てて救急搬送を要請する必要のないこともあります)。

具体的には、なんとなく元気がない・様子がおかしい・身のこなしがおかしい・ぐったりしている・熱がある・落ち着きがない・排せつの様子がおかしい・食べる量や活動量のリズムがいつもと違う・箸などを使う動作・咀嚼の状態・体重の増減・せん妄・頭痛・吐き気 などの様子の変化に気をつけて観察しています。

―緊急時のために知っておきたい情報―

既往症・現在の病状・内服薬・日頃の生活状況(食欲・栄養バランス・水分摂取量・排せつ)・認知症・家族構成・緊急連絡時の手順 など、適切な判断や慌てない行動が出来るように日頃からご利用者やご家族と話し合っておくことも良いでしょう。

次に、災害時の対応について学びました。

―災害時の対応と備え―

事業所には、ご利用者やご家族から下記のような「災害時の対応」についての情報収集を行い、利用者別に手順を作成することが求められます。

≪具体的な情報収集と連絡方法≫

事前にご利用者やご家族に災害時の避難場所や方法を具体的に聴取しておくことが重要です。テレビ・ラジオ・新聞・固定電話・携帯電話・インターネット・防災アプリ・FAXなどを活用して事前に情報収集を行い避難活動に支障がないように調整することも必要でしょう。

≪災害によって通信回線が切れてしまったら!≫

災害伝言サービス・防災行政無線・消防救急無線などを利用しましょう。

≪具体的な災害の備え≫

安全な経路で避難できる場所(避難場所)を知っておく。
利用者の心身の状況を知っておく。
必要物品の備蓄と備蓄量を確認しておく。(内服薬の確認も大切です)
家具の固定
安全に移動できる屋内(自宅)や移動時の手段手順を確実に知っておく。
緊急時の連絡先の把握と手段

―災害弱者―

高齢者は、災害時に危険察知能力や情報入手能力・行動能力にハンディキャップをもつ災害弱者になるケースが少なくありません。大きな災害時にはご利用者のみならず、近隣の自立高齢者への支援も必要となることがあるでしょう。当事業所でもBCP(事業継続計画)策定に取り組んでおります。

―研修を終えて―

緊急時に慌てず冷静に対応できるよう、今回学んだことを常日頃から心掛けたいと思います。また、昨今の地球温暖化に伴う異常気象現象の増加により、私たちは災害についても対応策や備えへの意識づけを常に心がける必要があると感じました。