今回は人権擁護や、虐待における共依存と拘束の問題を中心に、みんなで勉強したことを報告します。
まず共依存についてです。
共依存とは“互いに依存しあう、コントロールし合う結果、お互いの自立が妨げられている状態”を言います。
■共依存による高齢者虐待事例
無職の息子と暮らす認知症の母親A(80代)さん。Aさんには息子からの虐待が疑われましたが、当のAさんは“自分で転んだ”と言い張ります。日ごとにあざが増えている為、Aさんは施設入所となりましたが「ここで暮らしたくない」と再び自宅に戻ってきてしまいました。しばらくすると、またあざが見られるようになったため施設へ再入所となりましたが「息子と暮らしたい」と訴え入退所を繰り返しています。
上記のほか実際に高齢者虐待につながらなくても共依存かも?と感じるケースもあります。老老介護、家族介護においてショートステイやデイサービス等のサービスを利用すると、お互いの介護負担が軽減されると思われがちですが、「一人で家においておけない、私が家にいないといけない」「施設に泊まらせるなんてかわいそう」と相手を思いやる気持ちが強くなりすぎて介護負担となり、やがてその思いやりの裏返しとして暴力やネグレクト、心理的虐待へと発展する可能性もあります。
■介護職として心掛けておきたいこと
私たち介護職員としては、共依存の状態であっても利用者さんやご家族に対して「共依存だ」と決めつけず、「人命優先」「違和感があればすぐに報告」「家族全体を支援」「チームで対応」を心掛けることが重要です。
■介護職員が利用者と共依存してしまうケースもあります。
家族からの虐待が疑われるケースにヘルパーが深入りし、感情移入しすぎると「利用者さんの為に何とかしてあげないと・・・」との思いが強すぎて限界を超えた支援(自己犠牲、過度なやりがい)になってしまったり、「自分でなければ」と他者との連携をせずに利用者と密接な関係性を作ることで周囲から孤立する可能性があります。
介護職の自分が共依存にならないためには、「『自分でなくても大丈夫』と考える」「チームで関わり、属人的な支援をしないように意識する」「職員である自分自身を大切にする」ことが求められます。
次に拘束についてです。
■身体拘束等の適正化
身体拘束等を行う場合にはその態様、時間、利用者の心身の状況、緊急性等、やむを得ない理由を記録します。併せて、“身体拘束等の適正化の為の対策を検討する委員会”を定期開催し介護職に周知徹底を図ります。これによりスタッフ間で適正化についての情報を共有し、不要な身体拘束の防止につなげます。
■無意識のスピーチロック(言葉の拘束)に気を付ける
スピーチロックとは言葉かけによって身体的、精神的に行動を抑制することです。例えば、利用者さんの「部屋に戻りたいんですけど」という問いかけに対して、介護者が「ちょっと待って下さい」「立たないで下さい」「動かないで」などと返すことが該当します。
他にも、利用者さんが「後で来るから」と言われて「自分の意志で動けないのにいつまで待てばいいのか」(行動の拘束)と感じたり、「~ください」に対して丁寧な言葉かけに思えるが「丁寧に命令されている」(精神的な拘束)と感じたりする場合なども当てはまります。
スピーチロックを防ぐ言い換えの言葉の一例としては、
- 「ダメでしょ」→「○○さん、どうされましたか?」
- 「早くしてください」→「急がなくて大丈夫ですよ」
- 「さっきも言ったでしょ」→笑顔で根気よく何度でも伝える
- 「そこにいてください」→「一緒に行きますので〇分待っていただけますか」
- 「座ってください」→「立ったままだと危ないのでこちらにお座りください」
などがあります。
私たち介護職が利用者さんに対して普段何気なく使っている言葉が、無意識な「言葉の拘束」になり得ることへの認識を共有しました。
■研修を終えて
研修の最後にグループワークを行い、不適切なケアを想定したモデル事例に関する意見を交換し合って終わりました。共依存や拘束に対しては、利用者だけでなく家族を含めて支援するという心がけと、自分一人で判断したり孤立したりせず、チームとして適切なケアについての情報共有と共通認識、意思統一を図ることが重要だと思いました。そして何よりも利用者さん一人一人の尊厳を傷つけることのない適切な支援ができるよう、これからもヘルパー1人1人のプロフェッショナリズムを醸成していく思いを全員で共有しました。