みどり訪問看護ステーションでは、利用者さまのご自宅への訪問以外に、2ヵ所のグループホーム(認知症高齢者が、援助を受けながら共同生活を送る介護施設)にも訪問しています。そのうち1ヵ所は、当訪問看護ステーションと同じ倫生会『希の丘(のぞみのおか)』で、2019年4月にご紹介させて頂きました。もし良かったら下記リンクからそちらの記事もご覧ください。
「認知症になっても活き活きと生活ができる!知っていますか?グループホーム」記事へ
あともう1カ所は、『グループホームレラティブ別府(べふ、神戸市内)』という施設です。
2019年7月から訪問させて頂くようになり2年が経過しました。週に1度看護師2人で訪問し、状態観察や必要な処置を行っています。今回は、レラティブ定期訪問についてご紹介したいと思います。
~グループホームレラティブ別府のご紹介~
みどり訪問看護ステーションから車で約15~20分、神戸市西区北別府にあります。3階建ての建物で、各階9名(定員27名) 70歳~100歳の方が入所されています。『共に生きる―共に笑い、共に泣き、共に喜び、共に悲しみ、共に楽しむ』という理念に基づき、入所者さま1人1人の生活リズムや意思を尊重し、穏やかに日々過ごすことができるよう、スタッフの皆さん一丸となりサポートしておられます。
(入所の条件)
- 要支援2以上で、医師に認知症の診断を受けている状態にあること。
- 少人数による共同生活を営むことに支障がないこと。
- 自傷他害のおそれがないこと。
- 常時医療機関において治療をする必要がないこと。
- 専門医師が認めること。
- 事業者の運営方針に賛同できること。
(担当医のご紹介)
神戸市西区 西神中央駅の西神オリエンタルホテル2階にある、中村医院 中村宏臣医師が担当医です。当訪問看護ステーションと同じ倫生会みどり病院とも大変関わりの深い先生で、循環器・呼吸器・外科を中心に診療されています。また、在宅医療にも深く関わっておられます。
レラティブには週1回定期的に訪問診療に来ていただいていますが、近隣宅に訪問診療に来られる他の日にも、週2回 レラティブに立ち寄られ入所者さまの体調に変化がないか確認されています。中村先生がレラティブに訪問して頂いている機会が多いため、訪問看護師としても大変心強いです。
中村先生は、大変歌がお上手で美声の持ち主です。私も何度か先生の歌声を聴かせて頂いたことがありますが、本当に素敵な歌声で聞き入ってしまいました。中村医院には先生のCDも置いてあるそうです。神戸市西区 中村医院で検索するとCD情報の閲覧もできますので、是非ご覧ください。
(T社長・施設スタッフの皆さん)
T社長は、レラティブ入所者さまへの愛情に満ち溢れておられ、まさにレラティブ理念の象徴的存在です。小さなことでも入所者さまの変化や気付いたことがあると、当訪問看護ステーションにすぐ連絡して下さるので、看護師としても心強い存在です。釣りが趣味で、仕事の合間を見つけて釣りに行かれるのですが、釣れた魚やイカをさばいてスタッフの皆さんにふるまわれるそうです。入所者さまだけでなくスタッフの皆さんへの愛情もたっぷりだと感じます。
施設スタッフは現在30名でシフト制(早出・遅出・日勤・深夜)の勤務です。皆さんとても明るく、笑顔がたえません。入所者さまの体調など確認すると、多忙な中でも快く対応して下さいます。各階季節ごとに飾り付けをかえてあり、各イベントの写真や作品も飾ってあって、訪問時の楽しみのひとつでもあります。
(担当薬剤師のご紹介)
はせ谷さくら薬局の薬剤師さんが定期的にレラティブに訪問され、配薬して下さっています。また訪問時に施設の常備薬をチェックし、補充して頂いています。入所者さまの体調により、施設の常備薬を使用して頂くよう看護師から施設スタッフの方に伝える事があるのですが、薬剤師さんが常に薬を切らさないよう確認して下さっているので安心です。
~定期訪問の様子~
週1回看護師2人で訪問しています。1人は1週間の情報収集と訪問時の記録を行い、もう1人は入所者さまのバイタルサイン(体温・脈拍・血圧・酸素飽和度)測定を、各階交代しながら行っています。また、傷の処置や排便の援助・施設スタッフでは困難な爪(肥厚・巻き爪)の爪切り、血糖測定・インスリン注射などを行っています。高齢で認知症もあり排便困難な方が多いため、排便の援助(浣腸・摘便)以外に施設スタッフの方と相談し緩下剤の調整をはかっています。発熱時は解熱剤の使用や対応をスタッフの方に説明しています。各階約1時間、トータルすると1回の訪問で約3時間程かかります。
▲「レラティブ別府」でのコロナワクチン予防接種
(訪問の際、特に気を付けていること)
①感染対策の徹底
高齢者施設では、加齢に伴い感染に対する抵抗力が低下している方が多いです。そのことに加え、グループホームでは認知機能が低下していることにより感染対策への理解を得ることが困難な方が生活しています。コロナ禍という事もありますが、一度に入所者全員の健康チェックを行うため、特に感染対策には十分留意しています。看護師は健康チェックや必要な処置の前後に、手洗い・手指消毒や十分な防護(マスク、ゴーグル、使い捨て手袋、エプロンなど)を行い訪問しています。
②週1回の訪問であるため、その時にできる限りのことを行う
〝できる限り〟というのは、入所者さまの情報収集(記録やスタッフの方より)・観察・処置はもちろん、施設スタッフの方々へのアドバイスも行い、1週間入所者さまや施設スタッフの皆さんが少しでも安心して過ごせるよう努めています。また担当医の中村先生への連絡についても適宜判断しており、急ぎの際は直接電話で連絡を取り指示を仰いだり、内容によってはFAXでの報告をしています。医師への報告内容については、施設スタッフの方にも訪問時に必ず伝えるように心掛け、情報共有をしています。
③入所者さまを尊重し、ご本人の気持ちに寄り添う
看護師としては当たり前のことなのですが、認知症の方が入所されているので、コミュニケーションをはかる際は、相手の方を尊重し気持ちに寄り添うよう心掛けています。利用者さまの訴えの内容としては、幻覚(実際には存在しない虫や景色、人が見える)や被害妄想(布団の中に虫を入れられた、口の中に薬を入れられた)など訴えは様々です。それらの訴えを傾聴し、共感的態度で気持ちに寄り添うよう心掛けています。寝たきりの方も多く入所されており、コミュニケーションが取れない方もいらっしゃいます。言葉を話せない方にも同じ高さに目線を合わせ、声掛けを十分行い笑顔で接するよう心掛けています。
④施設スタッフの方々とのコミュニケーションを十分図り、信頼関係を築く
訪問時は記録から1週間の情報収集を行いますが、いつも入所者さまと関わっておられるスタッフの方々からの情報は大変重要です。スタッフの皆さんとの何気ない会話の中から重要な情報を得ることもたくさんあるので、訪問時スタッフの方と積極的にコミュニケーションをはかり、日頃から信頼関係を築くことが大切であると思っています。
~入所者さん1人1人の想いに寄り添った看護の実践を目指して~
レラティブの定期訪問を担当させて頂く前に、何度か倫生会のグループホーム「希の丘」の定期訪問に同行したことはありました。しかし、レラティブに毎週定期訪問するようになり、大勢の認知症の方と1度に接することに最初は戸惑いも多くありました。2年が経過しても対応や判断に迷い、悩むことはたくさんあります。その度に施設スタッフの皆さんと相談したり、訪問看護ステーションのミーティングなどで話し合い、皆さんからご意見を頂きながら対応するよう心掛けています。
レラティブスタッフの方から「看護師さんに相談しようと思って待っていました」と言って頂いたり、入所者さまより「部屋で待ってるね」「また来てね」「ありがとう」という言葉を掛けて頂く度に嬉しい気持ちで満たされ、看護師の私たちの方がパワーを頂くことが多々あります。また施設訪問を通じ、数えきれない程の学びを得ることができました。
週1回の訪問ではありますが、今後も医師・薬剤師・施設スタッフの皆さんと連携しながら、入所者さん1人1人の想いに寄り添える看護を行っていきたいです。そしてレラティブ理念である「共に生きる」をサポートできるよう丁寧に心を込めて対応していきたいと思います。