『住宅訪問に行ってきました』~リハビリテーション科では、退院前訪問指導を行っています~

“患者様はみんな本当は家に帰りたい”
どんなに暮らしにくい環境であっても、家に帰りたいのです。
施設に入れば、段差もなく、介護してくださるスタッフもいて、十分に環境が整っている。
自宅ならば、トイレも使えないし、お風呂にも入れない。
家の中で転んでも、誰も助けてくれる人がいない…。
それでも、家に帰りたい。
何が何でも自宅で暮らすことがベストだとは思いませんが、「住み慣れた自分の家で暮らす」ということの重さ、意味を忘れず、退院に向けたリハビリテーションに取り組むことができるように心掛けています。

■転倒して足を骨折した。手術をしてリハビリをして何とか歩けるようになってきたけれど、一人暮らしだし、このまま家に帰って生活できるだろうか?
■我が家は斜面を利用して建てているから、玄関までに石段が15段あってどうしよう…
■ここは田舎の古い家だから、段差だらけ。トイレもはなれまで歩いて行かないといけないし。

自分のからだが動きにくくなると、ご自宅の環境を思い浮かべ、患者様も、ご家族様も様々な不安を抱えています。
「環境を整えて、サービスを調整して、自宅に帰りましょう」その一言で、患者様の表情や行動は大きく変わります。
みんな家に帰りたいのです。

リハビリテーション科では、自宅へ退院される予定の患者様が、円滑に在宅生活に戻れるよう、必要に応じて、入院中に患者様の自宅を訪問させていただき、様々な助言や指導を行っています。
実際に自宅に伺うことで、患者様やご家族様の状態、家屋環境に合わせた、動作方法・介助方法・住宅改修・福祉用具の導入などを、より具体的に検討することができます。
また、在宅生活で関わってくださるケアマネジャーさんやヘルパーさん、福祉用具の業者さんなども同席してくださることが多いので、問題点の共有や、調整、申し送りなどがより円滑に行えるのも住宅訪問の利点だと感じています。

【先日退院前訪問指導を行ったAさんの話】

施設入所も考えていたAさんが、自宅へ帰る決意をして間もないころの話です。
以前から担当されていたケアマネジャーさんがAさんの状態を確認するために来院されました。
入院前は近所の公園を散歩できるほど元気でしたが、現在はリハビリの訓練中にやっと歩行器で歩行ができるようになったところ。
これまでと同じように、お一人暮らしができるだろうか…。
心配に思ったケアマネジャーさんから、「一度、ご自宅を見に来ていただけませんか?」と依頼を受け、住宅訪問を行うことになりました。

主治医に確認、病棟にも連絡し許可を得て、Aさんとともに、いよいよ約2か月ぶりの自宅へ出発です!

『熱が出ませんように… 雨が降りませんように…』

ご自宅に到着すると、ケアマネジャーさんも来てくださっていました。
いつになく落ち着かない様子のAさんでしたが、車から降りると、慣れた様子で門や扉を手すり代わりに、綱渡りのように持って入っていくではありませんか!
さすが住み慣れた我が家です。
門や扉はグラグラしていますし、介助しているこちら側はヒヤヒヤです。

久しぶりのベッドで横になり、しばし休憩となる予定でしたが、エアコンのリモコンが見つかりません。(救急搬送されたときは梅雨、訪問日は猛暑です…)
まずは手分けしてリモコン探しです。
ようやく発見し、「ベッドでゆっくりしていてくださいね」とお伝えして、家屋環境を確認していると、始まりました。
Aさん、ゴソゴソしています。(全くゆっくりしていません!)
久しぶりの自宅です。
気になっていたことが山ほどあったんでしょうね。
病院では慎重に行動されている患者様でも、自宅となれば、ほとんどの方が大胆に動かれます。
そんなもんです。

いよいよAさんの出番です。
玄関やトイレ、一つ一つ動作確認をしながら、安全に生活ができるように検討していきます。
「このマットは躓きの原因になりそうなので、外しましょう」
「家の中は何とか伝い歩きができますね、でも段差は心配だから、デイサービスに行く日は、お迎えの車が来るまでにヘルパーさんに来てもらって、上がり框の昇降を見てもらいましょう」
なんて話をしている横で、Aさんからひと言「また新聞配達してもらわなあかんな!」
新聞!!そういえば病院のベッドの上でも新聞読んでいたなぁ…ポストへ取りにいくだろうなぁ…きっと一人で。

玄関先までお一人で動かれることを想定し、両側手すり付きの踏み台を玄関の上がり框に設置することを検討、その後、退院までのリハビリでは、16cm×2段の段差昇降の練習を徹底的にすることになりました。
先日、退院後はじめての外来受診でお元気そうなお顔を見せてくださいました。
お一人暮らし、順調で何よりです。

「環境整備」=「住宅改修と福祉用具の導入」ではありません。
環境整備は、「患者様の生活の整備」だと捉えて住宅訪問を行っています。
「起床から就寝までの1日流れ」「デイサービスや訪問介護など1週間のスケジュール」「通院や外出など1か月の予定」などの生活を想定し、患者様やご家族様の思いを確認しながら環境を整えていきます。
また介護保険サービスで、日常生活を営むのに支障がある要介護者等に対して、日常生活上の便宜を図り、自立した生活を支援するため、手すりの取付け、段差の解消などの住宅改修に係る費用の給付を受けることができます。(支給限度基準額は一律20万円)

リハビリテーション科は「あなたの“できる”を応援します!」

環境を整えて、サービスを調整して、リハビリも頑張って、もう一度、自宅で生活してみませんか?