臨床検査技師ってどんな職業?どんなお仕事?

臨床検査技師ってどんな職業?

病院で働く人の職種で思いつくものは・・・? 数年前のアンケート結果では

1.医師、2.看護師、3.薬剤師、4.放射線技師・・と続きようやく臨床検査技師の名前が登場していました。
日常の業務でも、患者さまから検査技師さんと呼ばれるのは半数以下で、看護師さんと呼ばれることが多いです。
2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)蔓延により、PCR検査の担い手でもある「臨床検査技師」の職種名もメジャーとなったのではないでしょうか?

検査技師の活躍の場は幅広く、病院やクリニック、保健所、検査センター等などいろいろな施設で活躍しています。具体的にどのような仕事をしているのでしょう?!
臨床検査は元々医師により行われていましたが、医学の進歩で医師の業務が増し医師以外に検査技術者が必要となったことで、新たな職業として昭和33年に検査技師資格が誕生しました。その後も臨床検査業務は拡大し続けています。

臨床検査技師の仕事の内容は?

具体的に臨床検査技師業務は「検体検査」と「生理学的検査」に大きく分けられます。

検体検査・・・・血液や尿など検体を扱う検査です
一般検査(尿・便など)、血液検査、生化学検査、免疫血清検査、輸血・臓器移植検査、微生物検査、遺伝子検査、病理組織検査

生理検査・・・・患者さまに対しての検査です
循環器検査(心電図、心音図、動脈硬化など)、各種超音波検査(心臓・腹部・脈管・体表など)、呼吸機能検査、神経学検査(脳波、神経伝導速度など)、磁気共鳴画像検査(MRI)、眼底写真検査

みどり病院における臨床検査技師の活躍や役割は?

まずは検体検査についてお伝えします。
一般検査、血液検査、生化学検査、免疫血清検査、輸血検査を院内検査室で行っています。大きな病院では上記の検査それぞれに対して別々の検査室が設けられていますが、みどり病院の検査室は一般検査から輸血の検査まで手狭なスペースで行っています。
前回のコラム記事でお知らせしましたが、今年の7月末に新しい生化学分析装置が導入されました。

それに伴い院内で測定可能な項目が増え、より早く血液検査の結果を返すことが可能となりました。新機器では精度も向上しています、正確なデータ管理をするために、機器のメンテナンスや日々の精度管理に余念がありません。
新しくなった機器での測定項目を紹介します。

項目基準値単位検査結果の説明
蛋白TP(総蛋白)6.6~8.1g/dL血液中の全てのタンパク質の総和です。全身状態や栄養状態の指標となります。ほとんどがアルブミン、20%ほどのグロブリンは抗体を作るなど免疫機能として働きます。
アルブミン4.1~5.1g/dL血液中の水分を一定に保つ働きを持ち、ほとんどが肝臓で生産されるため肝機能障害で減少します。腎臓病や低栄養状態でも減少します。血液中のタンパク質の70%がアルブミン。
肝臓・胆道系T-Bil(総ビリルビン)0.4~1.5mg/dL赤血球中の黄色い色素で赤血球が古くなり壊れるときに出てくる間接ビリルビンと、直接ビリルビン(間接ビリルビンが肝臓で処理され胆汁中に入ったもの)の総和。肝臓や胆管の異常で上昇します。
AST(GOT)13~30U/L肝細胞で作られる酵素で心筋や骨格筋、赤血球などにも多く含まれます。肝障害で肝細胞が破壊されると血液中に流れ出し高値となります。ALTと共にアミノ酸代謝に関与します。
ALT(GPT)男 10~42
女 7~23
U/LAST同様に肝細胞で作られる酵素ですが、主に肝臓中に存在し肝細胞の障害の程度を調べるのに適しています。健康な人はALT<ASTですが、肝障害ではALTの方が高くなります。
LDH124~222U/L糖分を分解してエネルギーを作る解糖系という代謝経路に関わる酵素で、体内に広く分布しています。肝臓以外にも腎臓、心筋、骨格筋、赤血球、がん細胞に多く含まれます。
ALP(アルカリフォスファターゼ)106~322U/Lリン酸化合物を分解する酵素で肝臓や腎臓、腸粘膜、骨などで作られ肝臓で処理され胆汁中に流れ出ます。胆汁うっ滞や肝機能低下で上昇。骨の成長に関連し小児は成人より高値となります。
γ-GTP男 13~64
女 9~32
U/Lタンパク質分解酵素で胆管でつくられ肝臓でアミノ酸の代謝に関与します。肝臓、腎臓、膵臓などの細胞に含まれ肝・胆道系の閉塞で高値となります。アルコール性肝障害で上昇します。
Ch-E(コリンエステラーゼ)男 240~486
女 201~421
U/Lアセチルコリンなどを分解する酵素で、肝臓で合成され血液中に流れていきます。肝実質細胞の機能がわかります。肝臓のタンパク合成能の指標でもあります。
脂質T-ch(総コレステロール)120~219mg/dL細胞膜の構成や血管壁の強化や維持、消化酵素の材料として生命維持に必須な脂質です。過剰な場合は動脈硬化や生活習慣病の危険因子となります。
TG(中性脂肪)40~149mg/dL身体のエネルギーの貯蔵と運搬をし高脂血症や動脈硬化の指標となります。食物から摂取される外因性、肝臓で合成される内因性があります。
HDLコレステロール男 41~86
女 41~99
mg/dLそのままでは血液に溶けずタンパク質と結合する必要があり、高密度タンパク質(HDL)と結合したものがHDLコレステロールです。血中や動脈壁のコレステロールを回収し肝臓へ戻すため善玉コレステロールと呼ばれます。
LDLコレステロール70~139mg/dL低密度タンパク質(LDL)と結合したLDLコレステロールは肝臓から体の隅々へコレステロールを運びます。過剰になった場合には動脈壁に入り込み動脈硬化を引き起こす原因となり悪玉コレステロールと呼ばれます。
膵臓AMY(アミラーゼ)44~132U/L膵臓や唾液腺から分泌される糖質を分解する消化酵素で、膵炎、腎不全、唾液腺疾患、膵がんなどで高値となります。
心臓CPK男 59~248
女 41~153
U/L骨格筋や平滑筋など筋肉や脳に多く存在する酵素で、エネルギー産生に関わり、それら細胞の損傷により高値となります。
CK-MB5~20U/L心筋に多く含まれ、心筋が障害を受けた時に異常高値となります。心筋壊死量との相関もよく、急性心筋梗塞時の梗塞域や再灌流の指標とされます。
RF(リウマトイド因子)15以下IU/mL免疫グロブリンの一つであるIgGに対する自己抗体です。関節リウマチや他の膠原病などの自己免疫疾患で高値となります。
腎臓BUN(尿素窒素)8.0~20.0mg/dLタンパク質が代謝され腎臓で排泄される尿素の中に含まれる窒素の量。タンパク質の摂取量の増加や腎機能障害、脱水で高値となります。低栄養では低下します。
腎臓
痛風・腎臓
CRE(クレアチニン)男 0.65~1.07
女 0.46~0.79
mg/dL筋肉に含まれるタンパク質の一種で、筋肉内でエネルギーとして使用された後に尿と共に老廃物として排泄されます。腎機能低下で高値となります。
UA(尿酸)男 3.6~7.0
女 2.5~7.0
mg/dL細胞が分解された後にできる老廃物で通常は尿中に排泄されるが、腎機能低下やプリン体の摂りすぎで上昇します。高尿酸血症は痛風の原因となります。
電解質Na(ナトリウム)138~145mEq/L水分の浸透圧に関わり脱水などで高値となります。水代謝や腎機能の指標となります。異常値となると意識障害をきたします。
K(カリウム)3.6~4.8mEq/L酸塩基平衡や浸透圧の維持を担い、筋肉や神経系にも関与しています。心臓や全身の筋肉の働きに重要なミネラルで、異常高値となると致死的不整脈を起こすこともあります。
Cl(クロール)101~108mEq/L通常はナトリウム値と平行して変化します。水代謝や酸塩基平衡の指標となります。
Ca(カルシウム)8.8~10.1mg/dL骨の病気やさまざまな内分泌の病気で変動します。
IP(無機リン)2.7~4.6mg/dL体内では骨に存在しカルシウムと結合しています。内分泌や骨の代謝異常の有無をカルシウムと組みあわせることで病気の診断に役立ちます。
炎症C反応性蛋白(CRP)0.00~0.14mg/dL体内で炎症が起きたり組織細胞に障害が起こることで産生される急性期タンパク質で、炎症の指標となります。

検査室の規模は小さめですが、必要最小限の検査は殆ど実施しており、正確なデータを臨床へ返すため施設内・外で勉強し、よりよい医療を提供できるよう力をあわせて日々の業務にあたっています。幸いなことに、他施設で豊富な経験を積んだ検査技師も多数勤務しており互いが助け合い補い合うことで高い水準を目指しています。

日常の一コマの紹介としては、血算の検査にて白血球数に異常があったため、塗抹染色標本を作製し顕微鏡で確認後、白血病の疑いを即臨床へ提示できました。
今後の目標として一部の技師にゆだねてしまっている血液像検査も、全員がよめるようになることを目指しています。

私たち臨床検査技師の役割は一刻も速く正確な結果を臨床に報告することです!

  • 測定作業日誌・検査機器保守管理作業日誌を付け機器の保守管理を行う。
  • 統計学的精度管理台帳を設け内部精度管理を行い、精度管理サーベイへの参加で外部精度管理を行う。

以上検査結果の正確さを追求するため機器管理・精度管理を徹底し検体検査の精度の底上げを目指しています。

次に生理部門での役割です。
生理部門は、心電図検査、動脈硬化の検査、各種超音波検査、呼吸機能検査など患者様に対しての検査となります。
みどり病院には弁膜症センターがあり、検査室でも心臓超音波検査や循環器検査(心電図、心音図検査など)の件数が多い傾向にあります。
(同じ検査項目でも臨床が求める内容には病院毎の特色があります)

みどり病院検査室での心臓超音波検査は、心臓病治療(医師)に「良い画像」を届けるために、ハイエンド(最上級)の機器により弁膜症や冠動脈バイパス手術などの手術前後、心不全や虚血性心疾患などの治療前後の詳細なデータを提示出来るよう日々奮闘しています。

教育の現場においても、循環器Physical Examination研究会http://physicalexamination.jp/seminar/の運営のお手伝いもしています。
今年は感染対策の面で春から秋にかけての「聴診のススメ」,「physical boot camp」は中止となってしまいましたが、来年2021年の第18回循環器physical examination講習会は初のweb開催となります。ただいま映像や音源など準備をしています。
実臨床から教育の現場までより良い医療を提供するための学びに終わりはありません。

どうでしょう?
みどり病院でピンクのラインが襟元に入った制服を着ているのが臨床検査技師(「美人揃い」外部医師談)です。
探してみてください!!