身近なPhysical examinationを紹介します~知っていて損のない心不全のチェック方法~

検査科

Physical examination
日本語に訳すと“身体所見“といい、視診、触診、聴診、打診などの非侵襲的な方法で患者さんの体の状態を観察し、情報収集することを言います。

体の不調があり病院を受診した際、診察室で先生は患者さんの手を握ったり首に触れたり、肌の色や目の状態、顔色などを確認します。これらのいつもの診察風景もすべてPhysical examinationなのです。

当病院の理事長、室生卓先生が代表世話人を務める『循環器Physical Examination講習会』にて「医療の基本中の基本とも言うべき身体所見は医師だけでなく、医療にかかわる全ての人が知っていて損のないものです。さらに言えば、その対象は患者さんご自身やそのご家族も含まれます。」という内容の挨拶がありました。私自身、身体所見はあくまでも医療に携わる者が知っておくべき知識の1つという認識だったため、患者さんご自身やそのご家族にもというお話に感銘を受け、自身の考えを改めようと思いました。
そういった経緯もあり、今回は特別な医療機器がなくても、ご家庭で誰もが行える身体所見の取り方をご紹介したいと思います。

社会の高齢化に伴い高齢者の“心不全”が増えています。息切れや動悸の症状を「年齢のせいだろう」と思い込んでいたら心不全の状態であったということは少なくありません。

まず心不全とは…?

【日本循環器学会 ガイドライン】
心臓の構造・機能的な異常により、うっ血や心内圧上昇、および/あるいは心拍出量低下や組織低灌流をきたし、呼吸困難、浮腫、倦怠感などの症状や運動耐容能低下を呈する症候群

一般向けにわかりやすく表現したもの

心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です

四肢冷感
傾眠傾向 など

心不全のガイドラインにも出てくる“うっ血”、“低灌流”などを確認する身体所見をいくつかご紹介します。

①うっ血、四肢冷感

まず患者さんやご家族の手足に触れてみてください。
そして手足の状態を“乾いているor湿っている”、“温かいor冷たい”で判断します。

もちろんこれだけで心不全を診断するわけではありませんが、1つの指標として知っておくのもいいかもしれません。

②浮腫(むくみ)

靴下の痕がなかなか消えない=脚がむくんでいる!と思われる方も多いと思いますが、医療現場で脚のむくみ(下腿浮腫)を判断するときは以下の方法で行います。

まず、指を数秒間皮膚に押しつけます。
その後、皮膚がへこみ指の痕がしばらく残ると、圧痕性浮腫といって水分が溜まっている状態です。

▲画像引用 Wikipedia

へこみの深さや戻るまでの時間が長いほど重症度は高いとされています。ただし、浮腫にはさまざまな原因があるのでこの方法で評価できない浮腫も存在します。
むくみが気になる方は一度、かかりつけ医などで相談されることをおすすめします。

③頸静脈怒張

頸静脈怒張とは、うっ血がある際に認められる所見です。
頚静脈を判断するのにはトレーニングが必要ですが、心不全のガイドラインにも頸静脈怒張の経時的変化をみてうっ血をコントロールすることは実臨床で有用である。と記載されており、日々の観察でうっ血の状態を確認することも可能です。

まず、頚静脈とは首にある心臓へ血液を戻す大切な静脈です。
外頸静脈は首の表面近くの胸鎖乳突筋という首の太い筋肉の手前側を走行しており、比較的視診で確認しやすいです。
内頸静脈は胸鎖乳突筋の奥深くを走行しているため確認するのがやや困難ですが、心臓の右心房と繋がっているため右心房圧を直接反映します。
基本的には内頸静脈の拍動を観て判断するのですが、拍動を確認できる場合は外頸静脈でも問題ありません。

通常、座った状態では頸静脈拍動を確認することはできません。座った状態で頸静脈の拍動(動き)が確認できると、静脈圧は上がっており、うっ血がある状態と判断できます。
座ってテレビを見ているとき、ご飯を食べているとき、首の血管が膨らんだりへこんだりしているのが確認できるとそれはうっ血があるのかもしれません。
実際に医師が診断するときは、身体所見だけではなく、血液検査やエコー検査、レントゲン、CT、MRIなど様々な検査の結果から総合的に判断します。

終わりに

身体所見のメリットは非侵襲的で安全。短時間でいつでも・どこでも・何度でも行うことができるということです。自分自身や家族の体調を知る1つの方法として知っていて損はないと思います。是非、活用してみてください。

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2026年3月14日(土) 13:00~18:00(予定)
2026年3月15日(日) 8:40~14:45(予定)
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