こころに残るお話~エピソード1~

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風薫る5月となりました。
今回はさわやかな風に乗せて、ナースの体験談、第一弾をお送りいたします。

看護師3年目のことでした。
外科病棟で働いているときに、60代男性で喉頭がん手術を受けた患者様がいました。
喉頭がんのオペ後のため術後のケアはかなり大変で、私も3年目の看護として十分ケアができているか不安な日々を過ごしていました。
患者様は熱心にリハビリも受けられ、なんとか術後2週間後には廊下を歩行できるようにまでなりました。
毎日がむしゃらに勉強し、必死でケアを続けてきたこともあり、歩行できるようになった時は本当に涙が出そうになるくらい嬉しかったことを覚えています。

そんなある日、廊下を歩いていたと思っていた患者様が急に廊下で倒れてしまい、心肺停止の状態となりました。
何が起こったのか分からず、ただただ茫然とするばかりでした。
さっきまで元気に話し、歩いていた患者様が今目の前にいる人とは別人のようで、救命処置をしながらも悔し涙が止まりませんでした。
結局その患者様は、蘇生することなくそのまま亡くなられました。

「すいません。私が泣いて。」
とよく話をしていた家族の方に言うと
「人間味のある看護師さんたちに囲まれてお父さんは良かった。」
と言われました。
自分が泣く立場ではないと思っていたときにそう言われたことで、私も心から救われた気がしました。

看護師だから死に慣れているとか、当たり前に思うのではないかとよく聞かれる事がありました。
(そんなことよく知りもしないのに!)と思っていました。
そんなときにこういった体験を実際して、自分は看護師になったのであって、「死」を当たり前に思ったり、慣れたりしたいわけではない。
(素直に悔しい・お疲れ様・よく頑張った。)といつまでたっても忘れない、心のままにその人を受け入れようと心に決めた瞬間でした。

その後も多くの「死」と向き合うことがあります。
もちろん泣くこともあります。
けれど、それは自分の心に正直になれていることだと思っています。
これからも人間味のある看護師であり続けたいと思います。

以上卒後10年を経たナースの体験談でした。
ナースは、たくさんの方のいのちと向き合える希少な職業だと思います。
もちろん悲しいことや悔しいこともたくさんあります。
もしかしたら楽しいこと、嬉しいことより多いのかもしれません。
正直、しんどいです。

自分が若かった頃、つまずいたり、立ちはだかる壁にくじけそうになりながら、必死にナースという仕事の重みを受け止めながら、患者様に希望と勇気をたくさん頂いてきました。
人として大切なこともたくさん教わります。
ナースは誰でもそんな体験をたくさんします。
そして、その体験がひとりひとりの中でいつまでも輝いています。
どんなにしんどくても、辛くてもナースを続けていける理由がここにあります。
人として、ナースとして、たくさんのいのちに教えていただいたことをお返しできればと思っています。

今回は2階病棟にしては(?)マジメなお話でした。
今後もホロリとするお話や楽しかったお話・ズッコケちゃったお話など、患者様との体験談を織り交ぜてお届けしていきたいと思います。
またお会いしましょう。