薬学部の実務実習の受け入れ2

当院薬剤科では、臨床薬学教育に積極的に取り組んでおり、現在行われている2か月半の病院実務実習が開始される前から薬学部の学生さんの教育実習を受け入れています。
現行のカリキュラムが開始されてからは、毎年3~4名程度の5年生(2006年度入学の学生より6年制となっています)の学生さんの実習を実施しています。
2016年8月29日の記事で今年度の1回目の実習の様子を報告しました。
今回の記事では、今年度2回目の実習の様子を報告したいと思います。
今回は2人の学生さんが来てくれたので、早速お話しを聞いてみましょう。

薬剤師)
お二人さん、長期間の実習お疲れさまでした。
今から少しだけお話しを聞かせてもらって良いですか?

実習前は、病院薬剤師に対してどんなイメージを持っていましたか?

実習生Aさん)
病院薬剤師は病棟でお医者さんや看護師さんからの問い合わせに対応したり、入院患者さんの薬を管理しているイメージがありました。

実習生Bさん)
医師が処方した薬を取り揃え、入院患者さんに服薬指導をしているイメージでした。

薬剤師)
そうですか、Aさんは『病棟業務』、『DI業務』『薬の管理』、Bさんは『調剤』『服薬指導』のイメージだったのですね。

実習でどんな事を学びたかったですか?

実習生Aさん)
私は1期で薬局実習を終えていたので、薬局薬剤師と病院薬剤師の患者さんとの関わり方や服薬指導の違いを学びたいと思っていました。
また、入院患者さんの薬はどのように管理され、どのように調剤されているのかを見たいとも思っていました。

実習生Bさん)
調剤薬局では窓口ですが、病院ではベッドサイドで患者さんと接します。
病院薬剤師は患者さんの状態に合わせてどのように服薬指導をしているのか、どのように患者さんと接するのか学びたかったです。
そして、処方された薬により患者さんの状態が良くなっていくのを見たかったです。
また、医師、看護師、その他の職種の方々とどのように関わるのか、チーム医療において薬剤師はどのような立場なのかを学びたかったです。

薬剤師)
そうですか。
二人とも、学びたかった事はこの実習で学べたのでしょうか?
続いて、その辺について聞いてみましょう。

今回の実習ではどんな事を学びましたか?

実習生Aさん)
今回の実習で学びたいと思っていたことであった、どのように薬が管理・調剤されているのかということや、病院薬剤師の患者さんへの関わり方以外にも、他の医療従事者との関わり方や、必要な情報を的確に見つけることなど多くのことを学びました。
特に、患者さんへの関わり方や服薬指導においては、患者さんのカルテの見方や、そこから必要な情報をどのように見つけるか、また、その情報をもとにしてどうやって服薬指導していくのか、薬局とは違う角度から患者さんと向き合い、治療を行っていくということを知りました。
また病棟での業務や、調剤鑑査、服薬指導などの様々な場面で、少しでも疑問を感じたら、そのままにせず様々な方法を使って情報を探し出し、必ずはっきりさせることの重要性も学びました。

実習生Bさん)
最初、病院薬剤師は患者さんが入院してきたときと退院するときのみ服薬指導をすると思っていましたが、配薬レベルにより毎日配薬に行く患者さんがいたり、入院患者さんの症状はよく変わるので処方が変わるごとに服薬指導をしていることを知りました。
服薬指導を見学・体験させて頂いて、毎日カルテなどを見て患者さんの状態を把握しておくことはとても大切だということを学びました。
また、抗リウマチ薬のアクテムラやインスリンの自己注射の手技指導の練習をしたのですが、実際にデバイスを使ったことでメリット、デメリットがよくわかりました。
そのことを踏まえて指導は説明書通りにするのではなく、自分の気づいた注意点をしっかり伝えて指導することが大切だと思いました。
注射剤の調剤と監査もさせてもらいましたが、最初は何がいけないのかも全く分からなかったけれど毎日のように併用禁忌な理由やその調べ方などを丁寧に教えて頂き理解することができました。
思っていた以上に配合変化や投与量などで疑義照会をすることは多く、気を付けなければいけないことを知りました。

薬剤師)
二人とも、学びたかった事は学べたようですね。
それでは、次はこんな質問です。

今回の実習で、何が印象に残りましたか?

実習生Aさん)
入院患者さんの配薬と服薬指導に行かせていただいたことが印象に残っています。
何度も行かせていただいたのですが、私のつたない説明を熱心に聞いて、何の薬なのか質問してくださったり、患者さん自身がどういうことを考えていらっしゃるのか色々お話を伺ったりして、薬のことはもちろんですが、患者さんとどのように関わっていくのかを、自分自身で何度も考えるきっかけとなり、より理解を深められたのではないかと思います。

実習生Bさん)
入院されている患者さんは高齢の方が多いので、話すスピードに気を付けたり分かりやすい言葉で説明しないといけません。
患者さんと話すときと、医師と話すときでは言葉の使い方も違い、それぞれに分かりやすく伝えないといけないことが難しいと思ました。
私もいつかこのような対応ができるようになれたらいいなと思いました。
毎週回診に同行させてもらい、聴診器を使ったり、医師から直接教わることも多く、少し難しいと感じましたが、勉強になりました。
また、心臓カテーテル手術や弁膜症の手術など間近で見学させてもらいました。
心臓弁膜症の治療で有名なみどり病院の手術を説明していただきながら見ることができて、とても貴重な経験ができました。
また、関節リウマチの患者さんと接する機会があり、ネットで調べただけではわからない、実際のリウマチ患者さんの思いなどを聴くことができたのも印象的でした。

薬剤師)
二人とも、服薬指導についての印象が強かったのですね。
調剤薬局での服薬指導は、サッカーで例えると、患者さんはアウェーで、薬剤師がホームです。
一方、病院での服薬指導は基本的には調剤薬局の場合と同様なのですが、少し違います。
患者さんが調剤薬局に来られる時は『よそ行きの服』を着ていますが、入院中は『普段着』を着ています。
調剤薬局に来られる時は『よそ行きの対応』しかしてくれない様な方も、入院して毎日ベッドサイドに伺ってお話しをしていくうちに打ち解けてくれて、リラックスした状態でお話しをしてくれるようになります。
そして、会話を通じて聞き出した情報は、整理してその情報が必要な医療従事者に伝えたり、全ての医療従事者でシェアする事がとても大切になってきます。
また、服薬指導をする際は難しい『専門用語』をいかに簡単な言葉で説明できるかが、薬剤師の腕の見せ所です。
これは、調剤薬局でも病院でも同じですね。

実習中は楽しい事ばかりではありません。大変だった事もあったと思います。
もし宜しければ、その事について少し聞かせてもらえませんか?

実習生Aさん)
自分の頭では理解していても、それをいざ患者さんにお伝えしようと思うと、うまく言葉にならず、どうしたらよいか迷ってしまうことがありました。
分かりやすく、確実に情報を伝えるということがこれほど難しいとは思わず、とても大変でした。

実習生B)
私は2期からの実習で薬局実習がまだだったので、薬の商品名と一般名を一致させるのが大変でした。
薬の処方は、学校で学んだ一般名ではなく、商品名で記載されていたので見慣れないものばかりで全然わかりませんでした。
毎日新しいことを学び、分からないことだらけで知識不足を感じ、家でも調べたりしていました。
また、服薬指導に行くとき事前にカルテを見て患者さんの状態を把握したり、処方されている薬を全部調べたり、どのように説明するか時間をかけて準備してから患者さんの元へ行きました。
しかし、実際に患者さんの前で服薬指導をすると思っていたように説明できなかったり、もっとこういう風に言えば分かりやすかったかなあと思うことがあったり、難しいと感じました。
でも、服薬指導がうまくできたときは嬉しかったです。

薬剤師)
初めて服薬指導をした時は、私も色々と戸惑いがありました。
これから様々な知識と経験を積んでいけば、うまく服薬指導が出来るようになると思います。
頑張ってくださいね。

実習を終えて、実習前に抱いていた病院薬剤師のイメージは変わりましたか?

実習生Aさん)
変わりました。
実習前に持っていたイメージ通りのところもありましたが、イメージよりも深く患者さんと関わり、他職種とも積極的に関わって、常に情報を共有し、薬のプロフェッショナルとして責任を持って行動されていることがとてもよく分かりました。

実習生Bさん)
最初、病院薬剤師は病院の薬剤部内でしか働いていないと思っていました。
実際は薬剤部だけではなく、病棟に上がり、思っていた以上に医師や看護師の方々と関わり、患者さんと接することも多いのだと思いました。
医師と関わることは特に多く、どの薬を処方したらよいかなど話されていて、薬剤師は薬の専門家として必要とされているのだなと感じました。
薬剤師はチーム医療において、欠かせない存在だということが分かりました。

薬剤師)
良いイメージに変わったみたいですね。
良かったです。
病院も含め、チーム医療の中での薬剤師はまだまだ十分に力を発揮出来ていません。
今後薬剤師がチーム医療の中心的存在になれるようにみんなで努力をしていく必要がありますね。

今後実習をするであろう後輩に対して一言あれば、お願いしいます。

実習生Aさん)
最初の方は分からないことも多く、なかなかついていけないこともあるかと思いますが、その日に学んだことをしっかり復習して、知識と知識を繋いでいくと、実際に自分の知識として使えるようになってきて、とても楽しくなります。
大変だと思いますが、少しずつでもいいので色々なことを勉強してください。

実習生Bさん)
みどり病院の薬剤師の方々は、忙しい中でもたくさんのことを学ばせてくれるし、経験させてくれます。
2ヶ月半はとても長いと感じるかもしれませんが、充実した日々を過ごすことができるのであっという間に終わってしまいます。
たくさんのことを学べるように頑張ってください。

最後に、何か一言あればどうぞ。

実習生Aさん)
11週間大変お世話になりました。
実習期間を通して、たくさんご迷惑をおかけしましたが、先生方に様々な場面で、様々な知識を丁寧に教えていただき、大学の授業では学べない活きた知識を学ぶことができました。
実習が進んでいき、着実に自分の力になっていくことを感じて、とても嬉しく、毎日違うことを学べる楽しさがあって、実習が終わってしまうと思うととても寂しいです。
これからは、実習で学んだことを活かして、さらに勉学に励もうと思います。
本当にありがとうございました。

実習生Bさん)
2ヶ月半本当にお世話になりました。
初めての実習先だったので最初は不安や緊張でいっぱいでした。
しかし、お忙しい中みなさんいつも優しくたくさんのことを教えてくださり、充実した実習期間を過ごすことができました。
学校の授業では学ぶことのできない、たくさんの経験をさせていただき、新しい発見の毎日でした。
次の薬局実習先もみどり病院で学んだことを活かして頑張りたいと思います。
本当にありがとうございました。

薬剤師)
色々とお話しを聞かせて頂き、ありがとうございました。
実務実習を受け入れていて毎回思うのですが、実習開始時は2か月半なんて長いな!と思うのですが、いつも気が付いたらもうお別れの日が来ています。
ルーチン業務に関しては殆どの業務を体験してもらっているので、実習後半にはルーチンの業務に至っては薬剤師と同じレベルに達している実習生さんもいます。
他の薬剤師とも仲良くなって本当にスタッフの一員として働いていると錯覚させられる事もあります。
ですからあっという間に時間が過ぎているように思ってしまうのでしょうかね。
ところでお二人さんは、今回の実習では色々と学べたみたいですね。
今回学んだ事は、今一度復習をして自分の知識として定着させてください。
まだ先の事ですが、国家試験に今回勉強した内容が出れば良いですね。