「超音波でみる病気の腸(小腸・大腸)」腹部超音波検査Vol.9-2

腹部超音波検査、今回は、病気の腸について。
さっそく腹部超音波画像とともに、いくつか紹介します。

2.異常像から正常像を知る。

腹部超音波検査をするにあたって。。。消化管疾患の診かたと心得。
肝胆膵腎疾患における腹部超音波診断のトレーニングは正常像を知ったうえで、異常像を異常と判断し観察していきます。

しかし、消化管疾患の超音波検査においては別。

元気な腸はガス像だ!と前回記事で述べた通り、正常像にはガスが映り込むため、同定が難しいです。
なので、消化管の超音波検査では、炎症や液体貯留などでガスが消え、描出しやすくなった病気の腸を知り、正常像を学ぶと、より理解しやすいとされています。

“ 異常な消化管ほどよく観察できる ”

炎症による壁肥厚や腫瘍は低エコーに描出されることが多い!

では!病気の腸について、その超音波画像をみていきましょう。低エコーをさがせ!

大腸がん

まずは、日本人の部位別悪性新生物(がん)の死亡率男性3位、女性1位。。。
近年増加してきている「大腸がん」。
腹部超音波では、どのようにみえるのでしょうか。

※この記事の見出し正常の腸管画像と比べて、消化管ガスが消えている。。。

腹部超音波検査で描出可能ながんのほとんどは進行癌です。
消化管壁は肥厚し、層構造の乱れた、低エコーの腫瘤が形成され、内腔には内容物やガスが高エコーとして描出されます。
その画像があたかも腎臓の画像に似ているため、pseudokidney signと呼ばれます。

消化管のがん画像(Pseudokidney sign)は、どのくらい腎臓の画像と似ているの?

↑これ、腎臓の画像です。
まったく別の臓器なのに、患うことで似て見える不思議!!Pseudokidney sign!!

消化管の救急疾患

「お腹が痛いぃ!!!」
消化管の異常が原因で腹痛が起こる場合、右下腹部に多く、なかでも高頻度なのが虫垂炎による腹痛だそう。。

他にも憩室炎や腸閉塞(イレウス)、大腸炎、十二指腸潰瘍および穿孔など、右下腹部に限らず限局した痛みや、全体的に痛みを伴うこともあります。

虫垂炎

腹部超音波検査における虫垂炎の診断率は、感度75~90%、特異度85~100%で、信頼性の高い検査とされています。

通常、虫垂は盲腸から突き出た細い突起で目立ちません。
腹部超音波検査では、消化管ガスに隠れて描出できないこともしばしば。

何らかの原因で細菌感染が起こると、炎症反応によって虫垂粘膜が腫れ(浮腫)、粘膜にびらんを形成します。
また、糞便うっ滞や、糞石・食物残渣が虫垂に詰まると、虫垂内腔の閉塞が起こり、炎症が周囲にまで波及していきます。

大腸憩室炎

憩室は、腸壁の薄い部分が、腸管内圧の上昇によって外側へ突出してできます。
加齢とともに憩室の頻度は増え、日本人は右側結腸にできやすいと言われています。

憩室に便などが長期間停滞することで、粘膜に炎症が生じて、痛み発熱を伴います。

イレウス(腸閉塞)

腸管の通過が障害された状態。大腸と小腸のどちらでも起こる。
症状は、腹痛、嘔吐、腹部膨満感。

意外と便秘が原因!!?
・術後の癒着や大腸がん、便秘によるもの・・・単純性イレウス
・腸間膜動静脈からの血流の途絶や循環障害によるもの・・・絞扼性イレウス
・周囲臓器の炎症の波及やストレス等の影響・・・麻痺性イレウス

拡張した腸管内に液状成分(腸液)の貯留を認める。
腸管の運動性を観る。

キャンピロバクター腸炎

感染性腸炎のなかの1症例。
病原菌は、キャンピロバクター(campylobacter)。。
細菌性食中毒の約5%を占め、加熱不十分な鶏肉などを摂取することで感染します。

大腸の壁肥厚に加えて、回盲部のリンパ節腫大を伴うことが多く、腹部超音波画像では、腫大したバウヒン弁周囲のリンパ節腫大が特徴的です。

症状は、発熱・腹痛・下痢・嘔吐・血便。

◇サルモネラ腸炎とキャンピロバクター腸炎の超音波所見は似ている?
この2つは食中毒で、症状も似ており、サルモネラ菌は産みたての卵の殻に、キャンピロバクターは生の鶏肉に付着している場合があります。
生の鶏肉や鶏卵を触ったあとの感染対策、手洗いを心がけて!

虚血性大腸炎

結腸の末梢血管血行障害が原因。(急性虚血性循環障害)
好発年齢は40~60歳で、やや女性優位といわれており、
主な徴候は、急激に発症する腹痛、下痢、下血です。

罹患部位は、下行結腸>S状結腸>横行結腸 の順に多い。

血行障害が原因の大腸炎のため、血液検査では、白血球増多・CRP陽性など炎症優位の値が高値になりますが、腹部超音波画像では肥厚した腸管壁内に血流シグナルを認めないことが多いです。

下痢かと思ったら下血。。。とても驚くでしょうね。。

さて。
今回は、「超音波でみる 病気の腸」ということで、画像とともに、病気の腸をみてきましたが、知っている病気はあったでしょうか?
ご紹介したのは、ほんの一部ですが、それぞれ特徴的でしょう?

「超音波でみる 小腸・大腸」
いよいよ次で最終回。最後は「便秘について」。
“便は腸を通じて体調を知るためのバロメーター”
病気じゃないけど、あなどれない。がんより身近な便秘のはなし。
超音波画像と一緒に腸の世界を覗いてみましょう。