胸が痛い!は心筋梗塞?それとも狭心症?~臨床検査技師と一緒に知識を整理しましょう!~

検査科

三大疾病とは『がん』『急性心筋梗塞』『脳卒中』とされており、急性心筋梗塞は日本人の死因第2位となっています。心筋梗塞と聞くとどんなことを考えますか?

  • 生死に関わる怖い病気!
  • 痛い!苦しい!
  • 寒い時期に多い!?

というイメージがある方も多いかと思います。
今回はそんな心筋梗塞について臨床検査技師の視点からお話させていただきます。

みどり病院では、心電図や運動負荷心電図、心臓の超音波検査(エコー検査)や心臓CT、そして心臓カテーテル検査(緊急含む)と、心臓病の診断から治療までを一貫して行うことが可能です。

心筋梗塞?狭心症?

『心筋梗塞』と『狭心症』どちらもよく耳にする言葉だと思います。
ですが、この2つは同じ病気ではありません。

心筋梗塞

心臓に酸素や栄養を運ぶ冠動脈という血管が詰まる(閉塞する)ことで、閉塞した先の心筋に血液が行き届かなくなり、心筋が壊死する病気です。

心臓に酸素や栄養が行かなくなることで、胸が締め付けられるような痛み、圧迫感などの症状を自覚することが多いです。

冠動脈がプラークの破裂などにより生じた血栓で血管が詰まる

壊死してしまった心筋は再生することはなく、心臓から十分な血液が全身に送り出せなくなり迅速な治療が必要となります。

狭心症

冠動脈が狭くなっている状態(詰まっていない)のことを示します。

冠動脈がプラークなどにより狭くなる

虚血性心疾患

心筋梗塞や狭心症などの総称です。

虚血性心疾患の原因

虚血性心疾患の主な原因は動脈硬化と考えられていますが、この動脈硬化が起きる主な危険因子として以下の4つがよく挙げられます。

  • 高血圧
  • 高脂血症
  • 糖尿病
  • 喫煙

その他には運動不足や肥満、ストレスなど。
これらの身近な生活習慣病を放置しておくと心筋梗塞に大きく関わってくるので定期的な検査や病気のコントロールが大切になってきます。

虚血性心疾患の症状

〈典型的な症状〉

  • 胸痛、圧迫感
  • 心窩部痛
  • 動悸、息切れ
  • 冷や汗
  • 嘔吐、嘔気
  • 放散痛(左肩や顎下の痛み)

このように虚血性心疾患の症状は様々です。
典型的な症状の中でも最も代表的なのは『労作時の胸痛、息切れ』です。これらの症状はとても身近なものであり『歳のせいだから…』『最近、運動不足だから…』と放置してしまうことも多々あります。身近な症状だからこそ、違和感を覚えた際は一度病院で検査を行ってみてはいかがでしょうか?

症状を感じたら?

みどり病院では、以下のような検査を行っています。

①安静時心電図
虚血による心電図の変化を確認します。

②運動負荷心電図
心臓に負荷をかけた状態で心電図の変化を確認します。
※運動負荷心電図に関しては以下の記事に詳しく書いてありますのでご覧ください!
心電図検査のいろいろ〜いつ出るかわからない不整脈を見つけるために〜 2022.5.20)

③心エコー図検査
心臓の動きが悪くないかを中心に、形、大きさ、血液の流れも確認します。

④心臓CT

⑤心臓カテーテル検査
※心臓CTやカテーテル検査に関しては、検査室ではなく放射線科の記事を参照してみてください!
心臓(冠動脈)CT検査と心臓カテーテル検査

冬場に多い病気? うそ?ほんと?

答えは『本当』です。
国立循環器病センターより、全国的に見ても心筋梗塞による死亡件数は1月が最も多いという調査結果が出ています。

ではなぜ、冬場に多いのか?
人間の体は寒さを感じると体温の発散を防ごうとするため血管が収縮し血圧が高めになります。また、寒いと運動不足になりがちで、かつ、クリスマスやお正月といったイベントも多く、飲食や飲酒の機会が増え塩分摂取量も増えやすくなります。このように冬場は特に血圧のコントロールが難しくなるため、心臓への負担も大きくなってしまうのです。

また、暖かい屋内から寒い屋外へ移動したときの寒暖差により、ヒートショックと呼ばれる急激な血圧上昇が起こります。
寒い日に熱いお風呂に浸かるのは気持ちいいですが、お風呂場というのはヒートショックが起こりやすい場所でもあり注意が必要です。

<冬場に心筋梗塞を予防するための注意すべき10箇条>

  1. 冬場は脱衣室と浴室を暖かくしておく。
  2. 風呂の温度は38~40度と低めに設定。熱い湯(42~43度)は血圧が高くなり危険です。
  3. 入浴時間は短めに。
  4. 入浴前後にコップ一杯の水分を補給する。
  5. 高齢者や心臓病の方が入浴中は、家族が声を掛けチェック。
  6. 入浴前にアルコールは飲まない。
  7. 収縮期血圧(上の血圧)が180mmHg以上または拡張期血圧(下の血圧)が110mmHg以上ある場合は入浴を控える。
  8. 早朝起床時はコップ一杯の水を補給する。睡眠時の発汗で血液が濃縮しています。
  9. 寒い野外に出る時は、防寒着、マフラー、帽子、手袋などを着用し、寒さを調整しましょう。
  10. タバコを吸う方は禁煙をしましょう。

出典:国立循環器病研究センター公式サイト