アブレーション治療を受ける患者様へ~アブレーション室へご案内します!~

今回は、日ごろ私が携わらせて頂いている不整脈に対するアブレーション治療の実際について、看護師の視点からお話したいと思います。

アブレーションとは、カテーテルを用いて不整脈の原因となる心筋細胞を焼灼し不整脈を治療する方法です。これまでも関連記事が掲載されていますので、興味があればお立ち寄りください。

それでは早速、アブレーションを行っているカテーテル室(血管造影室)へGO!扉を開けると、うぁお!と声が出てしまうかもしれません。

たくさんの医療機器の入った部屋に、たくさんのスタッフがいます。アブレーションは、Drと、臨床工学技士、看護師、放射線技士、検査技師などのメディカルスタッフからなるチームで行います。

では、入室していきましょう!
(以下、ご自分が患者になった気分でお読みください。(※看護師:Ns/患者:Ptと表記))

Ns「お名前を確認します。よろしくお願いします。」
Pt「○○○○です。」(ドキドキ)
Ns「ベッドに上がって座っていただきます。まずは背中に大小さまざまなパッドを貼っていきますね」
Pt(おっと、ひんやり~)

ベッドへ臥床し、背中や胸に計18枚のパットを貼り、並行して血圧や酸素モニターなど装着していきます。
パッドから捉えられた患者さんの心電図波形が表示され、カテーテル室に患者さんの心拍が「ピ、ピ、ピ、ピ、ピ・・・」と響いてきます。これを聞くとさらに緊張してしまうかもしれませんが、スタッフがそばで声をかけながら緊張をほぐしますので、安心してくださいね。

それらが終わると、点滴のところから鎮痛剤や静脈麻酔薬を投与していきます。
アブレーションでは不整脈の種類によって、局所麻酔または全身麻酔を使用します。心房細動に対するアブレーションでは基本全身麻酔で、術中は意識のない状態で行うため、痛みも感じません。

また呼吸を安定させるために、低侵襲で身体面の負荷が少ない補助マスク(ラリンゲルマスク)を挿入して気道を確保し、人工呼吸器で補助をします。(不整脈の種類によっては覚醒していないと不整脈を誘発できず治療ができないものもあるため、全身麻酔を使わない場合もあります。)

次に消毒をして、清潔な布(ドレープ)を頭から足の先まで掛けます。
それから局所麻酔をして、首、足の付け根の血管に、管を入れていきます。

そして、その管から血管内に電極のついたカテーテルを挿入していき、心臓内の各部位に留置し、心臓内で起こっている電気の流れや位置関係を把握しながら、焼灼用のカテーテルで不整脈の原因となる異常な電気回路や興奮を発生させている部分を焼灼していきます。
その様子を画像でみると、自分の心臓の一部がこんなポップな画像になります。

焼灼前

焼灼後

上の焼灼前の画像の絶妙な色づかい、グラデーションは、なんと心臓の電気の活動を表しています。
下の焼灼後の画像の赤い数珠のようなネックレスのような円形が焼灼した部分です。心房細動は不整脈が出現している周りを取り囲むように(隔離)焼灼するのでこのような画像になります。
もし私がアブレーションすることになったら、自分のこの画像を額縁に飾りたいかも‥ちょっとしたデザイン画にみえますね。

ポップな画像に見えますが、この医療機器の進歩により格段に、より安全で正確な診断を手助けできるようになり、この解析画像や心内心電図の解読やその診断はとても高度な専門知識を要します。アブレーション治療の肝でもあるんです! Drはもちろんのこと、そこに携わっているスタッフのように、私も少しでも理解ができるようになれればと思っています。

アブレーション時の私たち看護師の役割は、術中の血圧や呼吸状態の変化を観察し、異常の早期発見につとめます。また、血栓予防の抗凝固薬や鎮痛剤の投与をします。さらに一番患者さんに近い存在として、不安や苦痛がないかお顔を見たり、手技の妨げにならないよう、適宜声をかけ寄り添います。

ある時、覚醒下で行っている患者さんが治療の半分を経過した頃、お顔をみると不安そうな表情で「麻酔はまだですか?眠れてないんですが…」と訴えられました。

この患者様は、首と足の付け根に局所麻酔をして行っていました。私たちにとっては、局所麻酔時の、「今から麻酔しますね」の声掛けも、患者さんにとっては「麻酔」と聞けば、「眠っているうちに治療してもらえるんだ」と思ったのでしょう。術中は動くこともできないし、聞くタイミングもわからない、麻酔が効いてない、大丈夫だろうか、いつ効いてくるんだろうか、と余計な不安を抱きながら、ベッドへ寝ていたことと察します。

眠る麻酔ではないこと、治療時の胸の痛みは鎮痛剤を追加できることを理解していただき、最後まで頑張って無事治療を終えることができました。
特に覚醒下でアブレーション治療をされる方は、不整脈の誘発のために、カテーテルや薬剤を使ってしばらく頻脈の状態が続くことがあり、胸部不快を感じられます。こちらで意図的に頻脈を作り出していること、治療に必要なことなので、心配しなくて良いことをお話しもします。
こうして、術中異常がないか観察したり、患者さんが安心して治療をうけていただけるよう手技の妨げにならないタイミングで声を掛け手助けしています。

焼灼後、異常な電気の発生がないことを確認して治療を終わります。
そしてカテーテル・挿入部の管を取り除き、止血を行います。全身麻酔をしている方は、薬剤投与をやめ、覚醒していきます。呼吸も自分でできるようになったら管を抜きます。

Dr&Ns「○○さん、無事に終わりましたよ!」

目が覚め、ドレープをとると、ほら青空です!
当院のカテーテル室の天井には青空が描かれています(o^―^o)

アブレーション治療を終えて病室へ帰りましょう。お疲れさまでした!