もう冬ですね。1年は早いもので、12月は1年で一番忙しい方もいるのではないでしょうか。この時期食事が乱れる方が多いように思われます。前回の中年女性の「痩せる」を叶えたい~管理栄養士の考える基礎代謝を上げやすくするライフスタイルとは~という記事で、『②身体を温める食事をする。』を考えましたが、いつもの食事に身体を温めやすくする食材を取り入れてくれてますか?少しでも健康でいられるように今回は、いつもの食事に変化があることを願って『③筋肉を作りやすい食事』を考えます。
◆基礎代謝量を上げやすくする・維持するには4つのポイント◆
①水分をしっかり飲む。
②身体を温める食事をする。
③筋肉を作りやすい食事をする。
④腸内環境を整える食事をする。
ここで、1日の摂取カロリーは、年齢・性別・運動量によって変わってきますが、30~49歳の女性、運動量普通(身体活動レベル普通Ⅱ)2000kcal/日の食事で考えていきます。
筋肉を作りやすい食事には、運動とともに栄養が重要です。特に大切な栄養素が、蛋白質です。
この筋肉を作りやすい食事に必要な蛋白質についてみていきましょう。
●蛋白質
人の身体の中で主に蛋白質で構成されているのは、筋肉・骨・血液など体を構成する主成分、酵素やホルモンなど体の機能を調整する成分、エネルギー源などがあります。このように蛋白質はいろいろなところで構成されているので、しっかりと蛋白質を摂ることが必要です。
では、蛋白質を含んだ食品が体に入ってからさまざまな栄養素を介して筋肉となりますが、1日に必要な蛋白質量はどれくらいでしょうか。
図1は厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」で蛋白質の推奨量は30~49歳の女性では50g/日となっています。
図1)
これは、身体活動レベル(低い、ふつう、高い)の「ふつう」にあたり、一般的な生活をする人の量です。また、運動をして筋肉づくりしている人の蛋白質量は、体重×1.1~1.4g程度(体重52kgの人は57g~73g)といわれています。
持久性トレーニングをしている人→体重×1.4g
ウエイトトレーニングをしている人→体重×1.7g(体重52kgの人は88g)
(樋口満(編著)『新版コンディショニングのスポーツ栄養学』P63より作成)
ただし、腎臓が悪い場合は、蛋白質の制限が必要なこともありますので、医師と相談して下さいね。
●蛋白質50gとは・・・
ここで、1日50ℊの蛋白質とは、どんな食品をどれだけの量、どんな時に食べたらいいのかを考えてみました。
蛋白質を含む食品は、何を選ぶかが大切で、たんぱく質を多く含む食品は、
a 肉
b 魚介類
c 卵
d 乳製品
e 豆製品
に分けられます。a~dは動物性蛋白質、eのみ植物性蛋白質です。
また、蛋白質はアミノ酸からできていますが、蛋白質の評価はこれまでアミノ酸スコア(蛋白質の優良性を示す数値、必須アミノ酸のバランスを数値化したもの)というもので評価されていました。これによれば、a~eはすべてアミノ酸スコア100という良質の蛋白質です。
これは消化などを考慮していないため、PDCAAS(タンパク質消化吸収率補正アミノ酸スコア)、そしてDIAAS(消化性必須アミノ酸スコア)という指標が用いられるようになりました。
PDCAAS(たんぱく質消化性補正アミノ酸スコア)は、1990年代にWHO(世界保健機関)によって定められたもので、含まれているアミノ酸の組成だけでなく、そのたんぱく質がどのくらい消化されやすく、体内で利用されやすいかを判断したものです。
DIAAS(消化性必須アミノ酸スコア)は、FAO(国際連合食糧農業機関)の最近のレポートで、食品中のたんぱく質の品質を評価するスコアとして(PDCAASをさらに)DIAASに置き換えるべきだということが記されています。DIAASはPDCAASと比較して、たんぱく質の吸収率をより正確に評価しています。
食品の中でもDIAASが高く、かつ筋肉づくりに大きな役割を果たすBCAAが多く含まれている食品を紹介したいと思います。
BCAAとは、運動時の筋肉でエネルギー源となる必須アミノ酸である、バリン、ロイシン、イソロイシンの総称です。この3つのアミノ酸は、枝わかれするような分子構造をしているため、BCAA(分岐鎖アミノ酸、図2参照)とよばれています。BCAAは筋肉のエネルギー源となる唯一の必須アミノ酸と言われ、筋蛋白質の合成を高めるとともに筋蛋白質の分解を抑制する作用が確認されています。そこで、運動後にBCAAを豊富に含む食品を摂取すると、血液中と筋肉中のBCAAの濃度が高まり、運動による筋たんぱく質合成効果をさらに高めることができます。さらに筋たんぱく質の分解を抑制することができるため、効果的に筋肉づくりを進めることが可能となります。次の図2は蛋白質を構成するアミノ酸の種類、図3~6は食品100g中にBCAAの含まれる量です。魚類ではさばやさんま、肉類では豚肉、大豆製品では納豆、乳・卵類はどちらも多く含まれていることがわかります。30~49歳の女性、運動量普通(身体活動レベル普通Ⅱ)2000kcal/日、たんぱく質50gの範囲内の量を摂ると良いでしょう。
図2)
図3)BCAAを多く含む肉類
- 鶏肉のささみ
→1人前目安 75g(1.5本位) カロリー約90kcal、蛋白質18~23g - 鶏肉の胸肉(皮なし)
→1人前目安 80g カロリー90kcal 蛋白質20g(1枚200g~300g) - 牛肉のレバー
→1人前目安 80g カロリー約100kcal 蛋白質20g - 豚ロース肉
→ステーキ用1人前目安1/2枚約85g カロリー210kcal 蛋白質16g(1枚約170g)
→生姜焼き用1人前目安1.5枚約75g カロリー180kcal 蛋白質14g(1枚約50g) - 牛もも肉
→1人前目安5枚約100g カロリー約240kcal 蛋白質19g(1枚約20g)
図4)BCAAを多く含む魚介類
- まぐろ刺身
→1人前目安100g(7切れ) カロリー115kcal 蛋白質約25g(1切れ約17g) - かつお刺身
→1人前目安100g(7切れ) カロリー150kcal 蛋白質25g(1切れ約17g) - さば
→1切れ1人前目安約80g カロリー170kcal 蛋白質約15g - 鮭
→1切れ1人前目安約80g カロリー150kcal 蛋白質約15g - 鯵
→25㎝位 1匹約160g(廃棄率55%で可食部70g) 1人前 カロリー約80kcal 蛋白質約14g - さんま
→中1匹約150g(廃棄率30%で105g) 1人前 カロリー約300kcal 蛋白質19g
図5)BCAAを多く含む大豆製品
- 納豆1パック
→50g カロリー95kcal 蛋白質約8g - 高野豆腐
→1枚16g(水に戻すと6倍の96g)カロリー約100kcal 蛋白質約10g - 木綿豆腐
→1人前1/4丁100g カロリー73kcal 蛋白質約7g(1丁約400g) - 絹ごし豆腐
→1人前1/3丁100g カロリー56kcal 蛋白質5.3g(1丁約300g)
図6)BCAAを多く含む乳製品・卵・その他
- プロセスチーズ
→1人前スライス1枚約20g カロリー約60kcal 蛋白質約5g - 卵
→1人前全卵1個(殻除く) Mサイズ50g Ⅼサイズ60g
Mサイズ カロリー70kcal 蛋白質約6g
Ⅼサイズ カロリー約85kcal 蛋白質約7g - 牛乳
→1人前コップ1杯200㎖ カロリー約120kcal 蛋白質約7g
次に、1日のBCAA目安量は次の通りです。(体重1㎏当たり)
これは、「日本人の食事摂取基準」に記載されているBCAAの必要量です。
BCAAの1日摂取量目安は、明確に定められていませんが、生命維持と成長のために必要なアミノ酸の摂取量は、厚生労働省が公表しています。
• バリン:26mg×52kg=1350mg
• ロイシン:39mg×52㎏=2030mg
• イソロイシン:20mg×52㎏=1040mg
合計:1350mg+2030mg+1040mg=4420mg
BCAA目安量とあわせてBCAAを多く含む食品の蛋白質量(50g)を1日に必要な摂取量を考えて摂るようにすると良いでしょう。
●合わせて食べると良いビタミン、EPAとDHA
- ビタミンDには、体内のカルシウム吸収を促して骨を増強するとともに、筋肉の合成を促す作用があります。これは、筋肉を修復する必須アミノ酸のリジンとタッグの相乗効果によって効果的に筋力増強作用があります。
魚介類、卵、きのこに多く含まれています。また、ビタミンDは日光に当たると体内で合成されるため、日に当たることも大切です。 - ビタミンB6はタンパク質の代謝に関与するビタミンの1種で、BCAAを効率よく吸収するときに役立ちます。ビタミンB6を多く含む食品とBCAAを多く含む食品と一緒に摂ると、蛋白質の吸収がより効率的です。
前回の中年女性の「痩せる」を叶えたい〜管理栄養士の考える基礎代謝を上げやすくするライフスタイルとは②〜のビタミンを参考にして下さいね。 - 青魚には、EPAとDHAという多価不飽和脂肪酸が含まれます。これは血をサラサラにし、コレステロールの値を下げ、善玉コレステロールを増やす働きがあることはよく知られています。その他に、体脂肪の燃焼を促す働きがあり、BCAAを多く含む食品でも紹介した鯖、鯵、サンマを必要量をよく摂取するといいでしょう。
以上のことを考慮して筋肉を作りやすい食事を摂ると良いでしょう。
次回は、◆基礎代謝量を上げやすくする・維持するには◆の最後4つ目のポイントの『④腸内環境を整える食事をする』を紹介したいと思います。次回もぜひ読んで下さいね。
参考文献:
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
樋口満(編著)『新版コンディショニングのスポーツ栄養学』
脂肪燃焼を促す青魚。「鯖」なら1日どのくらい食べるべき?