水以外で飲んじゃいけない薬とは?〜牛乳、アルコール、カフェイン飲料で飲むとマズい薬を薬剤師がお話しします〜

薬剤科

薬は水で飲む?水以外で飲むとどうなる?~薬の効果が変わったり副作用が出やすくなる~

「コップ一杯の水で飲んでください」
薬を受け取る時に薬剤師からそう説明を受けたことはないですか?では、水以外の飲み物で飲むとどうなるのでしょうか?結論から言うと、薬によっては効き目が変化してしまう(相互作用といいます)可能性があります。薬の効果が強くなったり、弱くなったり、また、副作用が出やすくなったりすることがあります。

薬との相互作用が問題となる代表的な飲み物として、グレープフルーツジュース、牛乳、紅茶・コーヒーなどのカフェイン飲料、アルコールがあります。グレープフルーツジュースについては、2020.10.14の記事「高血圧にグレープフルーツジュースはダメ!」って言われた事ありませんか?~グレープフルーツとお薬の意外な関係~もご参照ください。

代表的な処方薬との相互作用を表にまとめました(表1)。アルコールに影響を受ける薬は他にも多数あるので注意が必要です。

表1 代表的な処方薬と飲み物(牛乳、カフェイン飲料、アルコール)との相互作用

1)牛乳

牛乳は栄養価が高い飲料です。中でもカルシウムは特に含有量が多く、吸収が良いため多くの人が飲むことを習慣としています。牛乳と薬の相互作用の大半は、薬の吸収に影響を及ぼします。牛乳のカルシウムイオンと薬が結合(キレート)して、薬の吸収が阻害されます。また、牛乳は脂肪分が多いため、脂溶性の高い薬の溶解性が増して吸収が良くなることで、血中濃度が上昇し、作用が増強される可能性があります。

酸化マグネシウムを服用中に大量の牛乳を摂取するとミルク・アルカリ症候群(高カルシウム血症、高窒素血症、アルカローシス(※1)等)が現れることがあります。牛乳については、大量の摂取と薬を服用後2時間程度の摂取を避けるようにして下さい。
※1アルカリが体内に異常に蓄積し酸が喪失したため、血中の酸塩基平衡がそこなわれ正常よりアルカリ方向に傾いた状態のこと。

2)カフェイン飲料

カフェインは紅茶やコーヒー等に含まれており、多くの相互作用が知られています。主な相互作用として中枢神経興奮、心筋収縮力増強、利尿等の作用があります。カフェインは主に肝酵素CYP1A2(※2)により分解されるため、これを阻害したり、誘導したりする薬と相互作用を起こす可能性があります。

精神神経用薬や抗菌薬の一部は、肝酵素での競合を介してカフェインの分解を抑制し、結果カフェインの中枢神経刺激作用が増強する可能性があります。成分栄養表示を確認するなど、カフェインの大量摂取を避けるようにして下さい。
※2 CYPとはシトクロムP450の略語で、肝臓に広く存在する酸化還元酵素ファミリーの総称。CYP1A1のように接頭語CYP(シトクロムP450)の後に、ファミリーを示す数字、サブファミリーを示すアルファベット、分子種番号を示す数字で表される。

3)アルコール

アルコールは多くの薬剤と吸収・代謝などの段階で影響し、血中濃度を大きく変動させることから薬剤との併用は避けて下さい。

ベンゾジアゼピン系の睡眠薬とアルコールを併用すると、薬物の作用が増強することはよく知られています。他にも精神神経作用薬などはアルコールと併用することで中枢神経抑制作用が増強し、副作用が強く現れる可能性があります。

経口糖尿病薬やインスリンでは低血糖の危険性が増大します。アルコールの急速大量摂取は、肝臓での糖新生を抑制し、低血糖が起こることがあるため注意が必要です。

そもそも水は必要なの? ~溶解、吸収、飲みやすさに関係~

水なしで薬を飲むとどうなるのでしょうか?薬が吸収されるには、溶けた状態でなければなりません。水がなければ溶けにくいので、吸収が遅れ効果も現れにくくなってしまい、場合によっては、溶けずにそのまま便の中に出てしまうこともあります。また水には、飲みやすくするという役目があります。錠剤やカプセル剤を水なしで飲むと、食道に引っかかったりくっついたりして、炎症や潰瘍をおこすことがあります。

近年は、水なしで飲める薬が開発されています。薬の名前に○○OD錠と記載されているものがあります。これは口腔内崩壊錠(Oral Disintegration)といって、口の中の少量の唾液で崩壊して一緒に飲み込むことができる錠剤です。手元に水がないときでも服用することが出来ますが、OD錠ではない薬と一緒に飲む必要がある場合は、水で飲まなくてはいけませんので、注意してください。

最後に 〜ミネラルウォーターも注意が必要〜

今回紹介したもの以外にも薬に影響がある飲み物はあります。水の中でもミネラルウォーターは注意が必要なことがあります。ミネラルウォーターで問題となるのは水の「硬度」です。硬度の算出は国によって異なりますが、大まかに言えば「水の中に含まれるカルシウムとマグネシウムの濃度」を示したものです。牛乳の項で紹介したようにカルシウムやマグネシウムを多く含んでいる飲み物と薬は相互作用を生じることがあります。

日本の水は硬度が低い軟水が多いですが、海外の水は硬度が高い硬水が主流のため、海外から輸入した硬水は薬に影響する場合があり注意が必要です。以上のことから基本的に、薬は水分制限がある場合を除いて「コップ一杯の水道水か白湯」で飲んでください。

参考文献
日本薬剤師会HP
くすりの適正使用協議会