心臓の血管に石灰化があると言われたら2

~どのようにして冠動脈に石灰化が出来ていくのか~

心臓は全身に血液を送るポンプの働きをしており、このポンプが動くために必要な酸素や栄養を心筋へと送る働きをしているのが“冠動脈”と呼ばれる血管で、心臓の周りを取り囲むように走行しています。
虚血性心疾患と呼ばれる狭心症や心筋梗塞は、動脈硬化などによってこの“冠動脈”と呼ばれる心臓の血管の柔軟性や弾力性が減少し、血管が狭くなったり・詰まったりすることによって起こります。

動脈硬化などにより血管を狭くしたり・詰まらせたりする原因となるプラークと呼ばれるものは、最初はコレステロールが主成分なのですが、時間とともにカルシウムを主成分とする石灰に変化していきます。
この石灰に変化した状態を冠動脈石灰化とよび、動脈硬化が比較的進行した場合にみられます。

~冠動脈石灰化スコア(カルシウムスコア)とは~

CT検査によって冠動脈の石灰化を測定し、数値化したものを “冠動脈石灰化スコア(カルシウムスコア)”といいます。
冠動脈石灰化の程度は冠動脈のプラークの総量に比例しており、冠動脈石灰化スコア(カルシウムスコア)の数値が高いほど心筋梗塞や突然死を発症するリスクも高くなるといわれています。
そのため、欧米では将来突然死が起こる可能性を予測する指標として冠動脈石灰化スコア(カルシウムスコア)を健康診断として用いているところもあるそうです。

~冠動脈石灰化スコアの測定にはお薬は使いません!!~

上記でもお話したように、冠動脈石灰化スコア(カルシウムスコア)はCT検査によって測定し、数値化したものをいいます。
“冠動脈石灰化スコア”という名前から「なんだか難しそうな検査だなあ。」「大変そうな検査だなあ」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、お薬(造影剤)を使わずに撮れる簡単な検査なんです♪
検査時間でいうと10分もかからないくらい。。。♪
ただ、心臓は常に動いている臓器のため心臓の動き(心拍)に合わせて撮影しなければならないこと、息をしっかりと止めて(10~15秒程度)呼吸による心臓の動き(体動)を止めて撮影を行わなければならないことは必須条件となります。

~冠動脈石灰化を見てみよう~

当院では、冠動脈石灰化スコア(カルシウムスコア)の検査と心臓CT検査をセットで行っていますので、ここからは心臓CT検査での3D画像と合わせて、冠動脈石灰化がどのように映るのかを見て行きましょう!!

1)石灰化スコアが“非常に低い”と評価された冠動脈
まずは、冠動脈石灰化のない血管から見てみましょう。


図1:55歳 女性 石灰化スコア=0.00の冠動脈(心臓CT検査による3D画像)

図1は、心筋と血管のみが映された心臓CT検査による3D画像になります。
この画像の心臓には冠動脈石灰化が全くないため、冠動脈石灰化がある方と比べると狭心症や心筋梗塞などの心臓病の発症リスクは低いといえるでしょう。

2)石灰化スコアが“高い”と評価された冠動脈


図2-1:39歳 男性 石灰化スコア=3356.24の冠動脈(心臓CT検査による3D画像)

図2-1において、血管にびっしりとこびりついている白い塊が見えますでしょうか?
ピンク色の矢印で指し示した冠動脈にあるこの白いボコボコとした塊は、全て冠動脈にできた石灰化となります。

それでは、この冠動脈を冠動脈石灰化スコア(カルシウムスコア)で詳しく見てみましょう!


図2-2:冠動脈石灰化スコア(カルシウムスコア)


図2-3:黄色やピンク、緑色に色分けされた冠動脈石灰化スコアの画像

図2-2左側の画像において、黄色く色付けされている部分が見えますでしょうか?
この冠動脈石灰化スコア(カルシウムスコア)の画像では、CT画像上白く映る部分(骨や石灰化などの硬い部分)が自動で青色に色付けされるしくみとなっています。
そのなかで、冠動脈石灰化として評価する部分に他の色をつけ、骨と冠動脈石灰化とを色分けし(図2-3参照)、色分けされた冠動脈石灰化を最終的に数値として評価します。


図2-4:冠動脈石灰化を数値的に表したもの

図2-3のように色分けされた冠動脈の数値化された結果を元に、冠動脈石灰化スコア(カルシウムスコア)の合計が算出され、図2-4のように大きく5段階で評価されます。

この方の場合、冠動脈石灰化スコア(カルシウムスコア)が3356.24とかなり高い値となりましたので、後日心臓カテーテル検査という精密検査が行われました。
その結果、特に治療が必要なほど狭くなっている血管はないと診断されました。
しかし、狭心症や心筋梗塞などの心臓病の発症リスクが高いことには変わりありません。

~心臓の血管に石灰化があると言われたら~

たまたま受けた胸のCT検査から「心臓の血管に石灰化がありますね。」と言われたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
高血圧症、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病や喫煙習慣などがある人は、動脈硬化のリスクも高いと言われています。
上記でも述べましたように、当院では冠動脈石灰化スコア(カルシウムスコア)の検査は心臓CT検査と一緒に行っております。
胸に気になる症状がある方はもちろん、今は症状が出ていなくても将来のリスクを評価することが出来る冠動脈石灰化スコア(カルシウムスコア)の検査と、冠動脈の狭窄や閉塞がすでに起こっていないかを撮影することが出来る心臓CT検査をこの機会に是非一度考えてみてはいかがでしょうか?
気になる方は、お気軽にみどり病院 循環器内科医にご相談下さい。

過去にご紹介致しました、冠動脈の石灰化の記事もございますので是非ご覧ください。
「心臓の血管に石灰化があると言われたら」
URL:https://midori-hp.or.jp/radiology-blog/coronary_calcification/

心臓CT検査の流れについては、下記の記事をご覧ください。
「心臓CT検査を受ける前に不安を取り除いておこう!」
URL:https://midori-hp.or.jp/radiology-blog/ccta_relieving_anxiety/

他にも、これまで更新してきました心臓の検査についての記事も掲載されておりますので是非ご覧ください。
「心臓(冠動脈)CT検査で心臓の血管に狭窄があるといわれたら」
URL:https://midori-hp.or.jp/radiology-blog/coronary_stenosis/

「症例紹介①~心臓CT検査を終えて心臓カテーテル検査へ~」
URL:https://midori-hp.or.jp/radiology-blog/ccta_and_cag_cases1/

「心臓CT検査を終えて~放射線技師しか知らない第2ラウンド・心臓3D画像の構築~」
URL:https://midori-hp.or.jp/radiology-blog/web18_10_5/