ちょっと気になる画像講座①~脳梗塞ってどこ見ればわかるの??

Q.頭部CT,MRIクイズ~どの画像が脳梗塞?~

いきなりですが問題です。上の3つの画像はそれぞれ頭のCTもしくはMRI画像で見た脳の断面(輪切りした見え方)です。この3つのうち、脳梗塞と診断された画像は一体どの画像でしょう?
答えは少しずつ説明しながら最後に回答を紹介します。ぜひ、最後までご覧下さいm(__)m

~脳梗塞とは?~

脳の動脈がどこからか流れてきた血栓(血のかたまり)によって塞がれたり、血管自体が細くなり詰まってしまい、血液が流れなくなり脳細胞が壊死する状態のことをいいます。多くの方が片方の手足の痺れや麻痺といった症状が現れ、少ししたら消えるといった一時的な症状が現れますが、これは脳への血流が一時的に悪くなり、『一過性脳虚血発作』という脳梗塞の一歩手前の症状が現れます。このときMRIなどの検査をしても画像上は何も現れません。なので、自分でも気づかないうちに脳梗塞につながり完全に血管が詰まってしまうことがしばしばあります。

~脳梗塞の種類~

脳梗塞は血栓の大きさ、詰まる範囲や場所によって大きく3タイプに分類されます。

〇ラクナ梗塞
この梗塞は小さい血栓が脳の奥の細い血管まで到達し、詰まることをいい、後に紹介する2つに比べ症状が軽く、回復も早い脳梗塞になります。ラクナ梗塞で意識を失うほど症状が重篤になることはほぼありませんが、症状が分かりにくく、かなり後になって発見される事も多いです。また、細い血管まで到達する為1箇所だけでなく、何箇所も梗塞を起こすと多発性ラクナ梗塞と言われ、小さい積み重ねによって症状が少しずつ大きくなります。

〇アテローム血栓性脳梗塞
ラクナ梗塞より大きな血栓が脳まで流れ、脳の主要な太い血管で詰まって起こる脳梗塞で、眼に流れる眼動脈に流れていくと、網膜の血行が途絶えて一時的に片目が見えなくなります(一過性黒内障)。また、この血栓が脳の血管へ流れると言語障害や片麻痺などが起こり、これら症状が24時間以内に消失するものは一過性脳虚血発作(TIA)と呼ばれ、脳梗塞の前兆と考えられています。原因は、高血圧や高脂血症、糖尿病などの生活習慣病による動脈硬化によります。

〇心原性脳梗塞
心臓で出来た血栓が血流にのって脳までいき太い血管を詰まらせる脳梗塞で比較的大きな血栓が血管を塞ぐため大梗塞となります。他の脳梗塞は動脈硬化の進行とともに徐々に起こりますが、心原性脳梗塞は前ぶれもなく突然発症し、麻痺や意識障害が起き、死に至る場合もある危険な脳梗塞です。

Fig,1 脳梗塞の種類について

大きな血栓が頭の血管の太い所で詰まるほど症状も重篤になり、回復が悪くなる場合が多いです。

~脳梗塞はMRI?~まずは画像を見てください~

脳梗塞の検査はMRIが見つけやすいとされ、様々な種類の画像を撮ることで詰まっている場所や発症してからの時間経過が分かり治療の方法が決めやすくなります。
MRIの頭の検査では以下の画像のようにT1強調画像やT2強調画像・・・といった様々な画像を撮るため、どの画像を見たらいいのか迷います・・・まず、どの画像が何て名前?といった混乱状態になるため、当院で頭の検査で主に撮っている基本的な画像と名前を以下にお示しします。

この中で、脳梗塞の検査で特に重要な3種類の画像重要な順にご紹介します。
まず脳梗塞があるか、ないか・・・はっきりさせないといけません。まずは、

1)拡散強調画像(DWI: Diffusion Weighted Image)を見てください。
画像の中では1番ぼやけた感じで見にくい印象を受けますが、この画像が脳梗塞を見つける画像で1番重要な役割を果たします。
この画像の特徴は、正常でサラサラした水は変化なく、ドロドロとした水は白く見えるというところです。脳梗塞の他に出血や膿瘍、脳炎などでも白く見えます。

Fig,2 MRI拡散強調画像(DWI)

1番左の画像は正常な方の画像です。左から2番目から4番目は脳梗塞がある方の画像ですが、先ほど説明した梗塞の種類により白い部分の大きさ(範囲)に違いがあります。
小さいほうからラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳梗塞です。覚えていましたか(; ̄ー ̄)…ン? 怪しい方は、もう1度『~脳梗塞の種類~』を見ていただけると嬉しく思います。

2)FLAIR(Fluid Attenuated Inversion Recovery)
この画像では、脳梗塞が起きてから経過したおおよその時間を知ることができます。
1番コントラストがつき見やすい画像で、水がある部分が黒くなり、何か病変があれば白く映ります。先ほどの拡散強調画像で白くなり、この画像でも同じ箇所が白くなっていたら、脳梗塞が起こってから4、5時間経っており、変化がなければまだ4、5時間以内であると言えます。

Fig,3 拡散強調画像とFLAIR

上の画像で患者A、Bともに拡散強調画像で白くなり脳梗塞だと分かりますが、患者AはFLAIRで変化がないため脳梗塞が起きてからまだ4、5時間経っておらず患者Bは白くなっているため経っていることがわかります。

では、なぜこの時間経ったか、経ってないかの画像が重要かというと、現在脳梗塞の治療に使用されるアルテプラーゼ(tPA)という薬がとてもよく効くのがこの4、5時間以内とされるからです。この薬は詰まった血栓を溶かし、血液の流れを再開通することができます。
((φ(・д・。)ホォホォ ナルホド

3)MRA(MR Angiography)
最後に紹介する画像は血管の形を見ることができ、実際にどこまで血液が流れているのか、どこで詰まっているのか見ることができます。

Fig,4 心原性脳梗塞拡散強調画像(左端)とMRA画像(中央、右端)

上画像拡散強調画像で白くなっている側の血管が途切れ途切れになり消えて見えています。恐らく脳梗塞が起こっていなければ左から右端の画像の赤色部分が白く血管が映って見えると考えられます。

~CTではダメなの?分からないの?~

では、短時間で撮れるCT検査では脳梗塞は分からないのでしょうか?
実際は分かり辛く、変化が乏しいものが多く、CT検査のみで判別するよりMRIで検査をする方が見つけやすくなります。

Fig,5 Fig4と同患者のCT画像

先ほどの脳梗塞の患者のCT画像ですが、()の部分の脳梗塞が起きている部分の血管が白くみえます。このようにCT画像でも脳梗塞の変化をみることができる場合もあります。

~まとめ~

高齢になると脳梗塞や脳出血といった脳血管障害になるリスクが増加します。脳梗塞は水分補給を行わない睡眠中と起床後に起こりやすいので、寝る前と起きた後、水を飲む習慣をつけると脳梗塞の予防になります。

  • しびれ
  • ふらつき(めまい歩きづらい、めまいがする)
  • 嘔吐
  • しゃべりづらい(ろれつがまわらない)
  • 人の話を理解できない
  • 物が見にくい、二重に見える

など症状は様々で、時間が経てば経つほど悪化し、治療後の回復が遅れたり、後遺症が残る場合があります。脳梗塞の発症には、高血圧、高血糖、脂質異常も大きな影響を及ぼすため、普段の生活習慣の見直しも必要です。

A.【回答】頭部CT,MRIクイズ〜どの画像が脳梗塞?~

最後までご覧いただきありがとうございました。
本記事冒頭のクイズは3枚とも全て脳梗塞の方の画像でした。

Fig,6 タイトル画像

お時間がございましたら、
脳梗塞ってどう写るの?~CTとMRIで比較してみました~
も併せてご覧ください。 (ノ*・ω・)ノよろしくお願いします!