心不全について(その1.定義とステージ)

心不全について (その1. 定義とステージ)
日本循環器学会/心不全学会合同ガイドラインより

今回は学会のガイドラインを使って、やや専門的な表現も取り入れて心不全について説明していきたいと思います。

心不全とはすべての心臓病の終末像です。
あらゆる心臓病は最終的に心不全へと進行していきます。
日本循環器学会と日本心不全学会の合同ガイドラインで心不全は以下のように定義されています。
心不全とは、なんらかの心臓機能障害、すなわち、心臓に器質的および、あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果、
呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し,それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群である。この定義を一般向けにもっとわかりやすく表現すると
次のようになります。心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です。

現在、心不全の病期の進行については心不全ステージ分類(図1)が用いられることが多いです。このステージ分類は適切な治療を行うことを
目的にされており、症状がなくても高リスク群であれば早期に治療することが推奨されています。
リスク因子をもつが器質的心疾患(心臓の弁、血管あるいは筋肉等に異常がある疾患―――弁膜症、心筋梗塞、心筋症など)がなく、心不全症
候のない患者さんを「ステージA 器質的心疾患のないリスクステージ」、器質的心疾患を有するが、心不全症候のない患者さんを「ステージ B
器質的心疾患のあるリスクステージ」、器質的心疾患を有し、心不全症候を有する患者さんを既往も含め「ステージ C 心不全ステージ」と定義
します。さらに、おおむね年間2回以上の心不全入院を繰り返し、有効性が確立しているすべての薬物治療・非薬物治療について治療ないしは治
療が考慮されたにもかかわらずニューヨーク心臓協会(New York Heart Association; NYHA)心機能分類III度より改善しない患者さんは「ステー
ジ D治療抵抗性心不全ステージ」と定義されます。
要するに、ステージA.Bは心不全を発症する前の状態で、ステージC.Dは心不全を発症した後の状態となります。心不全を発症した後の身体機能は
まさに右肩下がりにどんどん低下していきます。心不全コントロールはステージCやDに移行させないことが重要で、心不全のケアはステージAの
段階から始まっています。高血圧、糖尿病、動脈硬化などの危険因子をコトントロールして、できる限り器質的心疾患を発症しないようにするこ
とが心不全とならないために大切なこととなります。

2024年4月22日 足立 和正

大切な言葉
器質的心疾患=心臓の弁、血管あるいは筋肉等に異常がある疾患―――弁膜症、心筋梗塞、心筋症など


日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン「急性・慢性心不全診療ガイドライン」より

 

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