心不全について(その2. 疫学)

心不全について (その2. 疫学)
日本循環器学会/心不全学会合同ガイドラインより

今回は前回の続きとして、心不全の疫学について説明していきます。

日本における死因別死亡総数の順位では,心疾患による死亡は悪性新生物(癌)に次ぎ2番めに多いという状態です。そのなかでも,心不全による死亡は心疾患の内訳のなかでもっとも死亡数が多い疾患です。一方,循環器疾患診療実態調査報告書(JROAD 2015)によると,2015年度の循環器専門施設・研修関連施設における心不全による入院患者数は23万8,840人で,年に1万人以上の割合で増加しています。

(倫生会みどり病院は日本循環器学会における循環器専門施設・研修施設に認定されています)

内訳では,急性心不全と慢性心不全の割合は約半々でした。日本全体における心不全患者さんの総数に関する正確な統計はありませんが,推計では2005年において約100万人,2020年には120万人に達するとされています。米国では2005年の心不全患者数は約500万人と推計されているので、人口比を勘案しても日本における心不全の罹患率は米国に比較して多少低い可能性がありますが,今後,わが国でも高齢化にともない心不全患者数が増加していくことは間違いないこととされています。

厚生労働省 政府統計 令和4年(2022) 人口動態統計月報年計(概数)の概況より

 

心不全で入院したことのある人は平均で5年間に約半数の方が亡くなっております。これは肺癌よりは良好ですが、大腸癌とほぼ同等、前立腺癌や乳癌よりは不良であることが報告されています。前回お話ししたように心不全を一度発症すると右肩下がりに身体機能が低下していきますので、普段から高血圧、糖尿病、高脂血症のコントロールが大事で、器質的心疾患(前回お話しした重要な言葉)を発症しないようにすることが心不全とならないための第一歩となります。禁煙、節酒、減塩、適度な運動と言った生活習慣の管理が望まれます。生活習慣病を発症している場合にはまず生活習慣の是正を行い、必要に応じて薬物治療を行い、管理する必要があります。その他にも睡眠時無呼吸症候群(睡眠中に呼吸が止まっている、いびきがひどい)は心臓疾患の危険因子あるいは増悪因子であることが知られています。家族に指摘された場合や、日中に過度の眠気に襲われるなどの疑わしい場合には、検査を受けて適切に管理することが勧められます。

睡眠時無呼吸症候群は木曜、金曜の室生理事長の外来と月曜の足立副院長の外来で主に対応しています。

2024年5月5日 足立 和正

 

医療記事紹介

・心不全について (その1. 定義とステージ)
高血圧症について 広報誌2023.12月号
・ペースメーカーについて 広報誌2023.8月号
心房細動を斬る 広報誌2022.12月号
・日本不整脈心電学会 不整脈専門医研修施設に認定されました 2023.2.10
・SGLT2阻害薬は心不全でも腎障害でも頼りになるマルチプレイヤー 〜糖尿病だけじゃない活躍の場が拡がってきました〜 2023.2.3薬剤科